2015-09-28

workshop16. 出力(階調)を想定し露光量を決定する

1.
絞り優先オート、シャッタースピード優先オート、プログラムオートはそれぞれ一長一短あり目的に応じて使えばよいのだが、いくら分割測光が賢く露光量を判断してくれるとはいえ機械的な標準値を示すだけだ。また大型ストロボでの撮影ともなれば単体露出計を使わざるを得ない。いったい何を基準にして露光量を適切化すべきか撮影者にとって日常的かつ最大の問題なのだが、意外なほど軽視され、惜しいところで残念な結果に終わっている写真が世界中で巨大な山を築いている。

RAWデータで画像を保存した場合、最大で14〜16bitの容量が確保されるため露光量の増減を現像時に可能だが、撮影時に適切に露光した場合と、不適切な露光量で撮影しあとから修正するのでは、加工の幅に大きな違いが出る。そしていくらRAW現像でも、白飛び、黒つぶれし階調データが存在しない部分にディティールを生み出すことはできない。

かぎりなく明度や彩度の差が小さいディティールまで保存できれば、14〜16bitの容器いっぱいに階調情報を詰め込める。この情報を使い尽くすか、意図的に捨てるか選択は自由だが、選択の自由が手中にあるのとないのではどちらが得だろうか。いくら中判の階調性がよいとしても、おざなりに露光量を決定した場合はライカ判フルサイズ以下のフォーマットより劣る画像しか得られないことを常に意識したいものだ。

2.
1/3EVずつの差で露光した純白の板を比較する。1/3EVは絞り値1/3段だ。
exposure21/3EVの違いがいかに大きいか理解できる。1/3EVの誤差はカメラ内蔵の露出計を使った場合も入射光式露出計を使用しても日常的に起こり得る。

カメラ内蔵の露出計を分割測光モードにし明部と暗部双方のバランスを取っても、撮影者が明部、中間調、暗部のいずれかの場所に目論んでいるディティールの残し方まで機械は気を利かして理解してくれない。このようなときマイナスかプラス側に露光量を補正をするが、1/3EVの差がこれほど大きいのだから適当に値を決定しても偶然に結果を委ねるだけでは望み通りになるとは限らない。
入射光式露出計では、わずかな光球の傾き、ストロボの充電量如何で1/3EV以上の差が現れる。結果は前述のとおりだ。まずはカメラ内蔵の露出計、単体露出計、さらにストロボの使い方をマスターしなければならないだろう。

なかには1/3EV程度の差は微々たるものと感じる人がいるかもしれない。では先の画像にディティールの要素に相当する線を付加したものを見てもらいたい。
exposure3中央の明度でディティールとして表現できるものが、1/3EV違いの左右ではできないのがわかる。さらにかなり大きな撮影画像から切り出したものを元画像にしているため、左、中、右それぞれ明度のムラがあり1/3EVより微弱な差が生じているが、この1/3EVに満たない差でさえディティールがはっきりしたり、しなかったりと変化が見て取れる。
ここではかなり太い線をディティールの要素にしたが、実際の撮影ではミリ単位、ミクロン単位の明度の差が複雑にからみあいディティールを構成する。つまり、例示した画像より露光量の違いは格段とシビアな結果となって現れる。

しばしばナニナニは高画質、なになには画質が悪いとカメラについて語る人がいるが、その人は適切な露光値でディティールを余さず記録できているかという問題がある。
1/3EVに満たない差でさえ、これだけ表現できる階調(ディティール)に差が出るのだから、最大限に階調情報を記録する能力がない人が画質についてあれこれ言うのは噴飯ものだ。私は恐ろしくて、あーだこーだ言う気になれない。また中判が欲しいと言う人も同様であり、より小さなフォーマットの機種が記録できる階調を使い切ってからでなければ大きなフォーマットを採用する機種を手に入れても使いこなせないと言える。

1/3EV未満でこれだけ「使用できる階調」に違いが出る。ここに例示したものはアンセル・アダムスの「ゾーン・システム」の定義に基づいているが、モノクロフィルムの使用を前提にしたゾーン・システムは未だに現役であり、露光値の決め方しだいでデジタル写真もまた大きく変わる。ゾーン・システムについては「workshop」で説明しているので一読してもらいたい。

3.
どのように露光量の適切化を実現するか方法論に入る。

写真は「標準反射率」を露光量決定の指針にしている。
標準反射率は18%の無光沢グレーだ。
18Gこの地上に存在する物体の反射率を90%の白から4%の黒とする。白である100%は光源そのものであり、黒である0%は光がない状態なので、肉眼で識別可能な範囲を90%から4%とし、この平均値を反射率18%無光沢グレーと定義している。

反射光を測定するカメラの露出計も、入射光を測定する単体露出計も、反射率18%のものが可能な限り正確に反射率18%として記録できる絞り値とシャッタースピードを示すようにされている。ストロボの光量を計測する場合は、閃光が光る時間がシャッタースピードの上限より短いことから、光量に対して適切な絞り値が示される。

ただし反射光式の場合は白い物体に向けて計測しても、黒い物体に向けて計測しても、これらを18%のグレーとして表現される数値を示す。カメラによってはRGB各色の割合を感知するセンサーが搭載されていて、被写体の色情報を付加し白や濃いグレー、色の彩度や明度に露出が左右されないよう加減をしているが完璧とは言えない。
完璧と言えないのは色感知のシステムの問題と、人間の恣意的な願望、被写体のどの部分にもっとも階調を残したいかの気持ちまで反映できないからだ。また特定の部分だけ測定するスポット測光に切り替えても、この部分を18%のグレーまたは18%相当の色として表現すべきか否か、階調をとことん残したいか否か、あるいはより明るく、より暗くすべきか機械は判定できない。
したがって、最後は撮影者がふさわしい露光量を決めなくてはならない。

入射光を測定する単体露出計は光量の絶対値を計測するので、被写体の反射率の影響を排除できる。被写体が白であっても黒であっても、光量の絶対値さえ正確に測定できれば、18%のグレーが正確に18%のグレーとして再現できる数値だけでなく、同時に白はありのままの白、黒も同様に黒として記録できるはずだ。
このため反射光式露出計より、光量の絶対値を計測する入射光式露出計のほうがあてになるのは事実である。
だが正確な光量が測定できたとしても、任意の部分をどのように表現すべきか、階調をとことん残したいか否か、あるいはより明るく、暗くすべきか判定できないのは反射光式露出計と変わりない。
したがって、正しく使った上で、やはり最後は撮影者がふさわしい露光量を決めなくてはならない。

女性ポートレイトを想定して、ここまでの話を具体化してみる。

女性の顔色の明度を18%の反射率なりの明度にして適切な場合と、これでは明度が望むものにならない場合がある。
18%グレーと18%相当のベージュを例示してみる。
exposure4一般的に言われる肌色を生成するのが難しいため近似の色相を用いたが、思いの外に暗い色であるのが理解されるだろう。この明度相当に被写体の肌の色を再現すると濃すぎると感じる人が多いはずだ。モノクロであっても18%グレーでは暗すぎると感じるだろう。アフリカ系の人を撮影した場合も本来の健康的な肌表現から遠ざかり明度が高すぎる結果になる。
またファンデーションによってメイクされた人の反射率を計測しても、反射光式露出計は常に18%に表現される値を示し、かなり実像から遠ざかり記憶内のイメージとも掛け離れる。

明度18%では肌表現が不適切なとき、より多くの露光量、より少ない露光量を選択しなければならない。
どのくらい露光量を増減するか経験値に基づいて加減する場合が多いが、たった1/3EVでさえ人間の目には明らかに異なるものとして認識され、それぞれの明度で使用できる階調(ディティール)に違いがあることを忘れてはならない。
入射光式露出計で光量の絶対値を計測した場合も、本来の肌の調子と違うものを望むのであればやはり露出計が示す値を参考に露光量を増減しなくてはならない。

ただし被写体である人物とともに衣装など他の要素が重要な意味を持つとき、肌の再現性が適切であっても他の要素の再現が不適切になることがある。
肌の明度、彩度と等しい衣装、小道具は限りなくすくない。また質感が肌と同等のものは無いと言ってもよい。
肌を基準に露光量を決定したとき、他の重要な部分で階調が十分に表現できないと、ファション写真のようにモデルの描写と服の質感をともに生かさなければならない撮影では失敗写真になる。
ここまで厳密さが求められないとしても、白い服、黒い服から階調が奪われると肉体の立体感がなくなり、意図して平面性を追求するとき以外は思惑と懸け離れた描写にがっかりするだろう。

静物や風景撮影ではブランケット撮影によって露光量違いの段階撮影が可能だが、ポートレイトでブランケット撮影は無理だ。したがって厳密さが求められる場合は試し撮りをしディスプレイで確認した上で露光量を決めるのがもっとも確実だ。
あとは経験を積み、露出計が示す値をどの程度加減すれば適切な表現になるか脳内にデータを蓄えるほかない。

しかし、これでは済まない場合がある。
RAW現像時にガンマ値(応答性)を可変させたり、コントラストを変えた場合、明度が変化する。
明度が変われば、カラーの場合は彩度も変わる。被写体の肌の彩度が変わったとき、単に「彩度」コントロールを上げ下げして望み通りになることもあれば、被写体にした人物の肌等の色は適切化されても他の部分が心に描いた色から掛け離れることもある。ガンマ値やコントラストを変えたのだから当然の成り行きだ。意図通りでなくなったとき、部分ごとにマスク指定して明度・彩度を検討しなおすことになり、色をコントロールする難しさの壁に直面する。

このような経験をするとライティングの重要性に気付くはずだ。
ライティングは凝った表現のためではなく、望んだとおりにディティールを記録するための技能だ。またストロボなど人工光源を使用するのがライティングではなく、自然光で撮影するときも太陽を光源にしたライティングであるのを忘れてはならない。

1/3EVや、これ以下の差であっても人間の目は確実に明度の差を検知できる。同時に階調表現の違いを実感できる。
ストロボ光を拡散させても、ライティングが適切でなければ光源からの距離がわずかに違うだけで1/3EV以上の差が生じる。適切にライティングしても被写体の形状や大きさによっては、光源からの距離相当の照度差が生じる。
このようなとき一様な光を得るため、面光源そのものの大きさを拡大するため複数のストロボを用いるが、これが多灯ライティングの基本であり本来の用途だ。

だが可能なかぎり光源の面積を大きくしても照度差が生じたり、意図する照度の分布にならない場合がある。このようなときは、光源の角度を適切化する、レフで起こす、逆にトレペ等でさらに拡散させ光を減衰させる、なんらかの方法で遮光し光源から直射する光量の比率を下げるなど工夫を凝らすことになる。
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