workshop23. 標準露光量の呪縛を断つ

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標準露光量の呪縛を断つ/ラティチュード

適正な露光量、標準的な露光量とは、18%グレーの物体を撮影したとき18%グレーとして記録されるように露出量を決めるとき成り立つ。もし18%グレーが、より暗く描写されたら露光量不足。逆に、より明るく描写されたら露光量過多とされる。なぜ、18%のグレーが基準なのか。この地上にある光源そのものの明るさと、暗黒そのものの暗さを除いた明るさ(反射率)の平均値を取ると18%の明度になるとされているからだ。また人物の皮膚の反射率はおおむね18%前後で、この点でも何かと基準として扱いやすいと言える。以下が18%グレーの明度だ。
18
何か釈然としないものを感じる人がいるかもしれない。世の中の反射率の平均値が18%グレーのように暗いなら、写真の多くが黒っぽい(暗い)印象のものになるのではないか。民族や個人差があるとしても人の肌を18%の明度で表現したら暗すぎないのか。などなど、だ。

このような疑問は、適正な露光量、標準的な露光量の概念にとらわれすぎているから生じると思われる。また、適正な露光量でなければ写真は失敗と考えているとも言える。

まず露出の成功・失敗という概念を捨て、感光媒体(センサーと回路、フィルム)のラティチュードに思考の焦点を当ててもらいたい。ラティチュードとは許容範囲であり、写真ではディティール(質感)が記録できる範囲だ。デジタルでもフィルムでも明暗差が激しい被写体を撮影すると、白とび、黒つぶれが発生する。両方発生する場合と、どちらか一方の場合がある。いずれにしても、白とび、黒つぶれの領域はディティールが再現できない。質感のない、明るさ暗さだけの記録だ。ただし、記録できる明度の幅よりプリントやディスプレイで再現できる幅は狭い。どちらかと言えば、明るい側に狭い傾向がある(すべてではない)。
LT

では照度比(明るい部分と暗い部分の比)がどれくらいであれば、記録できるラティチュードに収まるか、だ。デジタル写真の場合、機種ごとの違いはあるが1:6(2絞り半)程度に収めたいところだ。1:8(3絞り)になると黒くつぶれていると感じるだろう。さらに、再現できる幅の制約を受けるのを忘れてはならない。これはネガフィルムでもだいたい同じだ。
エクスポージャー
白とび、黒つぶれも表現のうちなので、画像内にこれらがあってはならないなどということはない。ここで1:6(2絞り半)程度に収めたいとしたのは、質感を残したい部分のことだ。白と黒、二値の画像をつくるのでなければ階調が表現されなければならない。階調がなめらかか、そうでないないものを目指すかいろいろあるとしても、最初に記録できる範囲は上記した通りだ。

このページをPCで見ているなら、右側にいくつかの写真が表示されているはずだ。いずれも撮影時、RAW現像時(あるいはスキャンデータをもとに紙焼きを焼くように画像化するとき)、記録できるラティチュードと再現できるラティチュードを計算に入れて作業をしている。たとえば人物の皮膚、表情描写をいつも標準露光量とされるものに合わせているわけではない。アンダーの中にほのかに見えるナニカ、ハイライトのなかに見えるナニカ、といった表現があるのだ。これらは、ラティチュードの概念でライティングし、露光量を決め、データ化している。ラティチュードの範囲であれば、暗い側、明るい側いずれかに偏った部分に主題があっても質感は(程度の差こそあれ)残るのだ。

適正な露光量、標準的な露光量、18%グレーが18%グレーとして記録できる露光量といったものが無意味とは言えない。ただし、なにがなんでも露出計が示した値通りでなければならないという話でもない。ラティチュードの幅に収まっているとき、アンダー側に寄った露光量、オーバー側に寄った露光量でも質感描写は可能であり、いずれを基準にするかは表現意図しだいだ。

 

Fumihiro Kato.  © 2016 –

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