workshop17. ローキーまたは黒の中にダークを描写する

⚠︎ ページの作成日を確認のうえご覧ください。
内容が古くなっている場合があります。

1.
ローキーな露出や黒(あるいは照度・明度が低い)を背景にした場合の問題は、白の中に白を表現する際同様に被写体が背景からきちんと分離されるか、被写体のディティールをちゃんと残せるかにある。
この写真はストロボ1灯を奥行き方向からシンクロさせて露光したものだ。RAW現像時に葉の緑色がぎりぎり残るところまで彩度だけ下げている。彩度差による分離ではなく、あくまでライティングによる分離を念頭に置いた作例である。(WEB用の縮小画像でわかりにくい場合は画像をクリックすることで大きなサイズで明暗が確認できる)
4812
ライティングの目論見は以下の通りだ。
・葉のかたち、葉脈はできる限り描写し植物の特徴を表す。
・つるの形状や特徴を残す。
・しかし、すべてが説明的に写りすぎないようにアンダーで省略する部分をつくる。

ライティングを組み立てている過程で出てきた課題は以下の通りだ。
・一様に背景がシャドーになるのでは単調なので手前側にやや明るい領域をつくりたい。
・植物の全体像の中に明部と暗部をつくりたい。

アンダーに撮影するだけなら露光量を減らしたり、背景に黒いものを使えば成り立つ。しかし、これだけでは単調すぎる。

2.
ではどのようにライティングを組み立てたかである。
dark1黄色い円形はストロボの発光部と拡散装置(ソフトボックスでもアンブレラでも可)、グレーの斜めの線は拡散光をつくるためのトレペだ。
第一段階は、被写体とストロボとトレペだけで基本のライティングをつくり、この光線状態で被写体と背景の関係を観察した。
第一段階では写りすぎるくらい平均的に照明されている。
光線状態を工夫していくとしても、まず平均的に光が回った状態をつくらないとライティングが複雑になり、結果的に不自然な写真になりがちだ。

第二段階は植物の背景から白い花器までをアンダーでつぶすため、図では垂直線で表した遮光のための黒い板を立てた。

このとき花器より手前は、まだ黒い木目調の台がはっきり描画されている。
また植物へのライティングは一様であり、シャドーを背景にして悪目立ちしすぎ雰囲気がまるでない。
したがって、次は演出用の光(影)を造形することになる。

画角に入らない高さに、光(影)が与える植物への作用を見ながら遮光板を設置した。同時に台の手前部分にダークながら明るさを残すことで被写体が暗い空中に浮いているかのような描写を避けつつ、この明るさが説明的になりすぎないよう明るさを二箇所に分離するための遮光板を設けた。分離される部分は、うっすら影を成していた花器の手前に決め、恣意的につくられた影の違和感をなくした。

3.
暗い中に暗いものを描写する際は、まず全体像を描く平均的なライティングからはじめるとよいだろう。
あとは遮光と露光量を工夫することになる。絵を描くつもりで、最初に全体像を描き消しゴムで消して行く要領で遮光する。

慣れてくればモデリングランプだけでも撮影状態が想像できるが、ミスをしたくなければポラを撮って確認するように試験撮影をすべきだ。

最初に光がまわった状態をつくっているので、このとき計測した露光量を与えると遮光の影響を受けない部分は適正露出になる。前掲の写真で言えば、左手前のこちら側を向いている葉と、そのつるの根元近くにある小さな葉が適正露光量で表現されている。
あとはかなりアンダーな状態にしたが、この二枚の葉が植物の形状を説明しているので、暗く描写されても写真を見る人は何が撮影されているか理解できる。またアンダー部の形状を見る人の想像力に委ねることで、写りすぎて説明くさい写真にありがちな単調さを回避できる。
ただし、右端の葉だけは構図上のポイントとしてやや明るめにして終結感をはっきりさせた。花器に関しては口型だけがわかるようにし、側面はWEB用の画像でどこまで判別できるかわからないがプリントではかろうじて形状が判別できる明るさまで殺した。

手前の明るさに、左側の葉の影を落とすべきか否かは表現意図しだいだろう。落としたほうが自然だと感じたので成り行きのままにしている。
この部分は縮小状態では判別しにくいので画像を拡大してみてもらいたい。

このライティングで偏光フィルターを用いると、手前のやや明るい部分が消える。遮光の作業しなくても斜め方向の反射が消える。これはこれで考え方のひとつであり、遮光のための作り込みを更にしなくてもよいこともあわせ手法として使えるだろう。

いずれにしても、ローキーまたは黒の中にダークな被写体を描写したいからといって暗いライティングや影から組み立てるのではなく、まず光がまわった状態からはじめるのがポイントだ。
暗い状態からスポット等で明るい部分を個々につくるより、明るい状態から抑揚をつけたほうが不自然さがなくライティングも単純化できる。
Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. All Rights Reserved.

検索語を上に入力し、 Enter キーを押して検索します。キャンセルするには ESC を押してください。

トップに戻る