workshop15. 広角レンズの画角相関

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超広角域を含む優秀なズームレンズが続々と発売され、広角1本、超広角1本と焦点距離が飛び飛びになる単焦点レンズを使用してきた時代には想像すらできなかった未来がやってきた感がある。このようなズームレンズは準広角から超広角まで単焦点レンズを連続的にすべて所有し持ち歩いているのと同じなのだから、もちろん便利このうえない。しかし、ファインダーを覗きながら連続的に変化する像だけでフレーミングを決定すると、焦点距離何mmで撮影しているか意識から抜け落ちがちなのも事実だ。

画角は遠近感描写と対の関係にある。広角レンズを使用してAからBまでの範囲をX地点に立って撮影できるとき、X地点から後ろに移動すれば望遠レンズでもAからBまでの範囲が撮影可能だ。ではなぜ広角レンズを使用するのか。引きが取れない状況だからかもしれない。もし引きが取れる条件であるなら、ダイナミックな遠近感描写を期待しているからだろう。広角域の焦点距離5mmの差は、標準レンズ以上の焦点距離の場合より遠近感描写の変化が著しい。足を使い前進、後退して撮影する機会が減りがちな超広角域を含むズームレンズは、ともするとズーム両端の使用頻度だけが高くなる傾向がある。隅々まで焦点距離を有効活用しても、焦点距離何mmで撮影しているか意識から抜け落ちているなら、遠近感描写に無頓着になっていると言えそうだ。

以下に、準広角から超広角までの画角と、画角個々と他の焦点距離との相関関係を図示する。焦点距離と画角はライカ判に準拠する。また馴染み深いと思われる同28mmを基準にして比較を行った。記憶しやすいよう相関については近似値を用いた。

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28mm(類似の焦点距離として30mm)の対角画角は、25mmあるいは24mmの水平画角に相当する。同様に、24mmの対角画角は20mmあるいは21mmの水平画角、20mmあるいは21mmの対角画角は18mmの水平画角といった関係にある。

28mmの水平画角は20mmと18mmの中間あたりの垂直画角、18mmと15mmの中間の垂直画角は24mmの水平画角となる。12mmの水平画角は18mmの垂直画角に近い。

これはあくまで近似値であり、前述のように広角レンズでは焦点距離5mm、1mm、画角数度の違いが如実に遠近感描写の違いとなり現れるため、それぞれがそれぞれのレンズで実験することを勧める。

さて、18mmから35mmにおよぶズームレンズがあると想定する。実際に同レンジのズームを所有している人は実際のレンズを、より広いレンジをカバーするズームを所有する人はズームの特定域の話をしていると理解してもらいたい。

ここでも現代もっとも普遍的と思われる28mmを中心にして考えてみる。28mmから35mmも、28mmから24mmもそれぞれ対角画角と水平画角の相関があり、広さの変化の類推が容易だ。したがってファインダーで目視したときの見当が大きくはずれることはない。24mmから20mm、20mmから18mmの間も同様である。

次に水平画角と垂直画角の関係を考える。垂直画角が、他方の水平画角相当になる状態は、カメラの縦位置構えと横位置構えの違いに似ている。(焦点距離が長い側を縦位置、短い側を横位置としたとき)水平方向に撮影範囲は2倍以上に広がる。図示した28mmと20mmあたりの関係がこれだ。標準50mmと中望遠85mmもまた、50mmを縦構えにすると85mmの横構えの垂直画角に近くなり、両者では遠近感描写の極端な差は感じられないが、超広角20mm以下になると無視できない差が現れる。28mmと20mm、28mmと18mmを比較すると、28mmの垂直画角がこれらの水平画角相当になり、あきらかに性質が異なる領域に達する。24mmと18、15mm近辺の関係になればなおさらだ。

28mmの水平方向の画角は人間が漠然と認知できる範囲に収まる。ただし、周辺部ははっきり見えてはいない。24mmの水平方向の画角は首を軽く振らなければ見えない範囲まで含んでいる。人間の視覚は横に広く、著しく縦に狭い。肉眼で視界に入るか入らないかする領域まで、20mm以下の焦点距離のレンズは垂直(縦)方向に画角が及ぶ。これが28mmや24mmと性質が決定的に異なる理由だ。そして画角は撮影できる範囲だけでなく、遠近感描写の差となる。

このように18mmから35mmにおよぶズームレンズには、このような諸々の特性が隠れているのだ。

肉眼で見えている範囲を狭め対象を注視するのと、肉眼で上下左右斜めに見えていないものまで画像になる状況はまるで違う。なのだが、ズームリングを回転させるだけで人間の生理感覚をはるかに超えた領域まで到達できるのが超広角ズームだ。むしろ物体を注視するかのような超望遠ズームのほうが脳裏に思い浮かべたまま、感じたままに撮影できると言える。超広角ズームをカメラに装着して構え、ファインダーで構図を綿密に決めたのに記録された画像が思い通りでないとすると、これは誇張された遠近感描写について見当違いをしていたときなのだ。

Fumihiro Kato.  © 2016 –

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