Workshop-4

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Workshop 4. dpiとppi、lpiの違いを整理する

1.
初歩的ではあるが、dpiはドット・パー・インチの略で1インチの長さの中に(1インチ四方ではない)ドットを何個含むかを表す単位、ppiはピクセル・パー・インチの略で1インチの長さの中に(1インチ四方ではない)ピクセルを何個含むかを表す単位でるあることを確認しておく。

2.
次に、コンピューターが扱え、モニターが描画できる、画像の最小単位が1ピクセルだ。画像はマス目の集合体となってモニター上で描画され、これを目視することで画像全体の様相を人は理解している。

この1マスで表現できるのは1色で、同時に諧調も1である。

ではなぜ、1ピクセル=1マス=1色であるのに全体としては諧調をともなった様々な色をモニターは描画できるのだろうか。

これは印象派絵画の点描画と似ている。
原色の点を細かく打ったとき、近づいてみると単なる点の集まりにしか見えないが、距離を置いて全体像を見ると1点は原色であっても、隣り合う別の色と複合して、あたかも絵の具を混ぜ合わせたときのように別の色が見える。
諧調も同じであり、1ピクセル=1マス=1単位の諧調だが、隣り合う別の諧調上の1単位を持つものと複合して、なめらかに諧調が変化しているように見える。
錯覚と言えば錯覚だ。
もし人間の肉眼の解像限界がより高く、脳内での視覚の処理法が異なっていたなら、点描画もモニターもわずらわしい色のマス目にしか見えないだろう。

3.
コンピューターが画像を扱えるようになり、これが普及しはじめた段階ではppiという単位はあまり用いられなかった。dpiで画像1インチあたりのドットの密度を表していた。
いま「密度」と言い表したが、コンピューターが扱える最小単位=ドットを何個含むかを表す単位、つまりどのくらいの密度で情報を持っているかがdpiおよびppiが示す数字だ。

だが最近の画像編集用のソフトウエアはAdobe社製品を筆頭にして、dpiからppiへ単位を変えている。
ドットもピクセルもコンピューターが扱える最小単位に変わりないにもかかわらず「なぜ」そうするのかと疑問を抱く人がいてとうぜんである。

ドットとピクセルは同様の意味でも使用できる。
それは前記したように、コンピューターが扱える最小単位を「点」と言うか「1個の細胞のようなもの」と表現するかの違いだ。

しかし厳密に言うと、ドット=点とピクセル1個の細胞のようなものは違っている。ピクセルは理解しやすいと思われるので、ドットによる描画を以下に示す。

dot

コンピューターが扱える画像の最小単位ピクセルは上の図のように隙間なく整然と方眼紙のように並んだ正方形のマス目だ。
だがドットという概念には、下の図のように隙間なく並んだものではない点の意味があり、これは点が整然と並んでいるものも、図のように整然と並んでいないものも含まれる。

先に1ピクセルの集合体は「印象派絵画の点描画と似ている」と書いた。「似ている」が同一ではない。
むしろ1ドットで表されたもののほうが「似ている」あるいは「同じ」だ。

4.
かつてdpiという単位で表現されていたものがppiに統一されようとしているのは、主にモニターでの描画を意識しているからだ。
デジタル化された画像は「整然と方眼紙のように並んだ正方形のマス目」である。モニターもデジタル化されたデータを目視できるようにした機器であり、描画方法も「整然と方眼紙のように並んだ正方形のマス目」を映し出す。

デジタル環境で画像を扱う場合、入力する機器もデジタルデータを生成し、このデジタルデータを受け取ったコンピューターもデジタルデータとして画像を扱い、モニターも同様だ。
で、あれば「本質的に異なる意味を持つドット」という概念を捨てて、デジタル環境内を行き来する画像の最小単位は「ピクセル」であると統一を図ったほうが誤解を生じさせない。

では誤解が生じる場面とは何かを次の項に記す。

5.
デジタル環境で画像は「整然と方眼紙のように並んだ正方形のマス目」として処理され続ける。

しかし、これがアナログ環境で再現されるとき必ずしも「整然と方眼紙のように並んだ正方形のマス目」として扱われない。あるいは扱えない。

身近な例を挙げると、インクジェットプリンターによって紙に印刷された状態はアナログに画像が変えられている。これは誰しも疑問を抱かないだろう。

インクジェットプリンターはデジタルデータを受け取ると、1ピクセル=1マス=1単位の諧調でインクを噴射させない。もしこのように1ピクセル=1マス=1単位の諧調でインクを噴射させて描画すると、モニターではきれいでなめらかに見える状態の画像であっても、ひどく粗い色と諧調の表現にしかならない。

そこでインクジェットプリンターはデジタルデータをさらに解析して、1ピクセルの値、その1ピクセルの周囲のピクセルの値をサンプリングして、人間にとって自然な表現に見えるようインクジェットプリンター用のデータに作りなおす。
そして紙にたいしてインクを噴射するとき1つの点=1ドットを複数の異なる色のインク、さらに噴射量に適切化する。
このようにインクジェットプリンターはピクセル単位の概念のまま印刷を行わず、ドットの集合体としてデジタル画像をアナログ画像として生成する。

したがってインクジェットプリンターが受け取るデータはppiを単位としたものだが、インクジェットプリンター自身がアウトプットするときはドットを単位とした概念を用いていると言える。

6.
ppiとdpiはともにコンピューターが扱える画像の最小単位なので、どちらの数値も同じ密度で画像をサンプリングして1単位としている点は変わらない。
ppi=dpiとしてかまわない。
このため、これまで混乱したままppiとdpiが同居していた。これをより正確にコンピューターが扱える画像の最小単位であることを意識して、「整然と方眼紙のように並んだ正方形のマス目」という意味を持つピクセルを採用しppiに統一を図るようになった。

だがdpiが未だに使用されていて廃止されないのは、インクジェットプリンターや商業印刷機が1つの点=1ドットを複数の異なる色のインクを用いて表現し、「整然と方眼紙のように並んだ正方形のマス目」でアナログ化できないからだ。
主に印刷では、比較図で示したように「隙間の開いた、点の集合体」として画像を生成する。逆の言い方をすると、「隙間の開いた、点の集合体」である印刷物の点の密度をppiで表現するのは誤りである。

ややこしいだろうか。それならば以下のように単純化して頭に入れておくとよいだろう。
デジタル環境で一貫されているときはppi、デジタル環境からアナログ環境に変換されて生成されるものについてはdpiと大雑把に把握しても間違いではない。

7.
実践の場では、デジタルカメラから取り込んだ画像やCGで生成した画像をモニターに描画させたり、JPEG、TIFF、その他のフォーマットとして書き出すときはppiとなる。

ただしこのデータが印刷所に渡るとき、印刷所の人や機器はppiをdpiに置き換えている。なぜなら、最小単位の1ピクセル=1マス=1単位の諧調を、マス目状のまま処理できないのが印刷だからだ。このマス目状のデジタルデータから、隙間の開いた点の集合体にしてアナログ化しなければならない。

モニターでは72ppiもあれば十分な色と諧調を表現できているが、隙間の開いた点の集合体にしてアナログ化するにはこれでは粗すぎる。

印刷には活版印刷の時代から「線数」=lpi=ライン・パー・インチという単位が用いられていた。
活版はハンコと同じ原理で凸の部分にインクが付着し、これを紙に押し付けることで像を刷る。ただこのままではハンコと同じで諧調が表現できず、フォントや模様のような線画しか印刷できない。

このため網分解という手法を用いて諧調を表すようになった。
網とはガラス板に細かく直線の刻みを入れ、これと直交する同じ密度の線を刻み、このマス目に黒い塗料を入れたものだ。このとき1インチに何本の密度で線を刻むか、あるいは刻んだものかを示す単位が「線数」=lpi=ライン・パー・インチである。

このガラスに網をつくったものを諧調のあるものの前に置いて、製版カメラで撮影すると、諧調が以下の図のように生成される。

line
凸版であるからハンコと原理は同じなのだが、一面のベタ塗り状とするのではなく、隙間が開いた凸点の大小の組み合わせで諧調表現をするのである。
この場合、不自然でなくほぼ満足できる諧調を表すには175線=175lpiの編み目を刻んだガラスを原画の前に置くのが妥当だとされるようになった。

編み目によって生成される諧調の図をもう一度見てもらいたい。これはピクセルの概念でしか表現できないデジタルの諧調ではないが、なんとなくデジタル化されたような見た目をしている。
それはアナログ的な無段階で変化する諧調でなく、点(マス目)によって段階的に表現される諧調だからだ。
「線数」=lpiをデジタルだ、というのは間違っている。ただ、感覚的に疑似デジタルのようなものと捉えると、いきなりアナログしかも専門的な印刷の単位と怯えずに案外すんなり把握できるだろう。

これはオフセットでフルカラーが実現されCMYKの各版を用いるようになっても同様で、175線=175lpiが印刷の基準値とされている。

ここで問題なのは175線=175lpiの網分解に適したデジタルデータのピクセルの密度はどれくらいなのかということだ。

これもまた経験値から350ppi、モノクロでは版数が減って1版で十分な諧調を表現しなくてはならないので600ppiの密度のデータが必要とされている。
さらに美術印刷になると、より細密に画像を「隙間」のある「ドット」の集合体であるアナログで生成しなければならないためカラーであっても600ppi程の密度でデジタルデータを準備しなければならない。

 

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