画像周りの作業をするためのOSX環境づくり2

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前回、データ保管の安全性向上をめざした環境づくりについて述べた。今回は、画像を正しく調整するための環境づくりに話を進める。

画像を扱い操作する者にとって最大の問題は、色の正確さの維持だろう。色の正確さをアウトプットまで維持するための環境づくりは、ディスプレイ抜きにしては語れないものがある。端的に言えば、sRGBディスプレイとAdobeRGBディスプレイのタブルディスプレイ環境をつくることになる。このときAdobeRGBディスプレイは、AdobeRGBの色空間を再現できると公称されているものならなんでもよいわけではない。なのだが、では高価なAdobeRGB100%再現、キャリブレーション機能搭載機でなければダメかとなるとそうでもない。

AdobeRGB100%再現、キャリブレーション機能搭載機は、映画等のCG制作・編集用途など複数のスタッフが同時に作業を進行させ、かつ正確さを高度なレベルで維持するためにはどうしても必要なものだ。しかし、写真家とグラフィックデザイナーとの関係、写真家が自らの作品をつくるときを考えると、もちろん高度な製品のほうがよいにきまっているが、ここまでの性能は必要ないケースがほとんどである。というのは、経験によって補完できるものがあるからだ。

わかりやすい例で説明するなら、ディスプレイとプリンターの関係になる。ディスプレイはRGBによる加色混合、プリンターはCMYKを基本とした減色混合で色が特定される。両者は本質的に違うものなのだから、ディスプレイで見たままを紙に印刷できなくて当然だ。もちろん両者の差異を少なくしたいからAdobeRGB対応プリンターには、AdobeRGB対応ディスプレイを使用した色校正が必須なのだが、まったく同一の見た目にするのは無理だ。この差異を人間は経験から学び「この色調は印刷時にこうなる」と判断できるようになる。この喩えを拡張しプリンターを印刷所に置き換えてもよい。減色混合で色を特定する印刷ではディスプレイ表示そのままの像を再現できない。さらに紙質の違いごとに仕上がりは変わる。このような差異を、写真家とグラフィックデザイナーは経験値を加味して判断するのが常識になっている。

つまり、だ。使い勝手が悪かったり、あまりに色再現が悪いディスプレイは問題外だが、AdobeRGB100%再現、キャリブレーション機能搭載機でなくても使える機材となり得る。

ここで重要になるのは、ディスプレイがちゃんとキャリブレーションできているかだ。

OSXをOSとして用いるMacは、ディスプレイのキャリブレーション機能が実装されている。「システム環境設定」>>「ディスプレイ」を開き、「カラー」>>「補正」だ。ところが、工場出荷時のキャリブレーションが高度化したこともありiMacやMacBookでは「補正」の内容がだいぶ省かれた。画像をつくる上でこれは物足りない。では、いままでのキャリブレーション機能はどこに隠されたか、だ。「Macintosh HD」>>「システム」>>「ライブラリ」>>「ColorSync」>>「Calibrators」フォルダーに「ディスプレイキャリブリレータ.app」がある。ディスプレイキャリブリレータ.appをダブルクリックで起動させたあとは、あのわかりやすいインターフェイスでかなり高度なキャリブレーションが可能になる。El Capitanのアップデートにより仕様が変わった。「システム環境設定」>>「ディスプレイ」を開き、「カラー」>>optionキーを押しながら「補正」をクリックすることで「詳細」調整が可能になる。調整をしたら、名前をつけてプロファイルを保存する。ガンマ値は、2.2で問題ないだろう。

ここで迷うことがあるとすると、それはディスプレイの色温度かもしれない。

7200Kはテレビ放送が用いる基準の色温度でありグラフィックにまつわる諸作業では論外だ。青すぎる、と言える。グラフィック関係の作業は、撮影、レイアウト、印刷、校正と流れる。印刷所は、5000Kの照明下で色校正を行う。また撮影時のストロボは5000K前後の色温度だ。と、いうことはグラフィック作業は5000Kで一貫したほうが、関わる人すべてが丸く収まる。なので、ディスプレイの色温度はD50に設定すべきとなる。

だが以前はグラフィックでもD65、6500Kが推奨されていた。私もそうなのだが、D65に慣れ親しんでいるとD50はかなり赤く感じられる。ここは慣れを克服すべきで、可能な限りD50の統一値にしなければならないだろう。だが、ここにも問題があるのだ。WEBに使用する画像を生成する人は、インターネットのコンテンツを見る人の環境で色を校正しなければならない。このためsRGBと、印刷用のAdobeRGBのダブルディスプレイが必須になるのだが、D50と7200K、D50とD65に設定したディスプレイの間を作業時に行き来するとかなり色そのものへの感覚が混乱・麻痺する。また、一般の人の環境もまたまちまちでApple製品であれば、D65、6500KがMac、iPhone、iPadのディスプレイ基準値にされているが、Windowsでは7200Kをネイティブ値としているケースが多い。どの分野に使用される画像をつくるのか、画像制作に関わるスタッフはどの色温度を採用しているか、でディスプレイの色温度を決めるのが妥当。したがって、印刷分野ではD50がよいのだろうが、ケースバイケースで決めるのがよいのではないだろうか。

私は印刷を前提にしたAdobeRGBディスプレイはD50、WEB用途を前提にしたsRGBディスプレイは中庸さの意味からD65に設定している。いずれにしろ、ディスプレイの色温度を決定しないかぎりキャリブレーションは終わらないので、ひとまず決定できたことにして話を進める。

キャリブレーションを終了させるとき「プロファイル」を保存しなければならない。保存時の命名則は各自各様でよいが、私は「ディスプレイ名」「年月日」「色温度」にしている。+++201605005D50などといった具合だ。このプロファイルが何に使用されているか、である。AppleのOSはOSXになる以前から、色の一貫管理を可能にする機能を実装してきた。一貫管理を可能にしているものが「Colorsync」だ。Windows OSで色の一貫管理が可能になったのはここ数年で、やはり同様にプロフィルを使用している。

Colorsyncは、まず人間がデジタルデータの色を検証するディスプレイに着目する。人間にとって、色がどう見えているかわからないと後々の管理が不可能だからだ。ここでまずディスプレイのプロファイルが使用される。あとは、人間が認知した色のまま、他の機器に色の統一をするようにさせる。ColorsyncはMacに接続された機器が求めるならどのような相手にでも色再現の基準を示すことができる。もちろん、機器だけでなくアプリケーションもColorsyncと協調できる。Colorsyncを中心にして、すべてのソフト、すべてのグラフィックに関する機器が色の統一見解を持つようになっているのだ。プリンターで印刷するとき、ドライバが色の管理を「Colorsync」にするか「プリンター固有」のものにするか選択を迫るのは、色の一貫生の基準をどうすべきか使用者に委ねていることになる。

「画像にプロファイルを埋め込む」のは、「かくかくしかじかの環境で再現された色だ」と処方箋を書くようなものだ。画像を扱う人の多くがMacを使用しているが、それぞれのMacにColorsyncがあるので処方箋を元に他の環境でも色の一貫生を保つことができる。個人の環境内だけでなく、共に作業する人の環境でもColorsyncは有効に機能するのだ。

しかし、WEB用の画像に関してはColorsyncの詳細な処方箋は無駄になりかねない。すべてのWEB閲覧者がColorsyncを使用できる環境、ブラウザを使用しているとは限らないからだ。とはいえ、サイトを閲覧する人それぞれがてんでばらばらの色調で画像を見ているすると、画像をつくった者としては不安でならない。金赤=M100% Y100%に近い赤い色の画像があったとして、他の人がこれをM=80% Y100%のオレンジ系に傾いた色として見ているとしたらこれは別物の画像と言っても過言ではない。したがってPhotoshop等のソフトはsRGBを前提にした画像に変換しつつ、Colorsyncまで詳細ではないが色の基準に関するプロファイルを残してWEB用の画像を保存できるようになっている。

それでも一般の人はディスプレイの明るさ、コントラスト、ガンマ値、色温度に無頓着であり、Colorsyncを理解できないOS、色の一貫管理を得意としないOS、さらにブラウザによってはプロファイルを解釈できないものもある。またクライアントがディスプレイに無頓着なら、クライアントの環境で正しい色は再現されない。ここにWEB用や素人に渡す用途での画像生成の難しさがある。WEB等ではこのように画像に関してぞんざいにあつかわれる前提に立ち、望みを託してプロファイルを残すほかないだろう。

では、AdobeRGBのまま画像をJPEG化してWEB用にしたときどのように見えるか、だ。AdobeRGBはsRGBより広い色空間を保存できる。色の階調、濃度、彩度の幅が広いAdobeRGB画像が、狭いsRGBディスプレイに表示されるとき、表示しきれない色は飽和する。飽和したとき、色は階調、濃度、彩度を失うので、それぞれの最大値に圧縮され詰め込まれたかのようになる。赤で顕著であるが、ベタ塗りで、やたら派手な発色になるのだ。これは実際に確かめてみてもらいたいが、到底許容できる範囲ではない。

だが色の相違はWEBに限った現象でなく、一貫した色の管理を行わないデジタル画像は同様にどこかで許容できない逸脱をしているものだ。このように考えると背筋に冷や汗が流れるのではないだろうか。

 

Fumihiro Kato.  © 2016 –

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