画像周りの作業をするためのOSX環境づくり1

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iOSをメインにして画像周りの作業をしている人はそうそういないだろう。iOS版の画像調整アプリケーションはあるが、そもそもiOSはフォルダーの階層構造を見せないことにしているし(見ようと思えば見られるけれど)、まだまだ周辺機器との連携の万全な態勢が整っているとは言えない。前者は何かあったらサポートに電話して解決をはかる思想のもと開発されたOSだからしかたないのだが、ブラックボックス化された環境はやや怖い。したがって仕事用としてはまだOSXがインストールされたMacが主流であり続けるだろうから、OSXの上で画像周りの作業をするとき手始めに何をどうしたらよいかから記していこうと思う。

第一に整えるべきものは、いかに画像原版、調整後の完成画像を失わないようにするかだ。原版データおよび完成原稿が失われたら元も子もないので、安全な環境をつくるためのコストは惜しまないほうがよいだろう。

まず電源周りだ。雷サージ付きタップ、無停電電源装置(UPS)は必須だ。無停電電源装置は過電流が機器に流れ込むのを防ぐ機能を持っているが、無停電電源装置の本質はサージ防護ではない。したがってサージ、となる。また、UPSがすべての周辺機器に電力を供給する能力を持っているとも限らないので、常に通電させておく必要のない機器はサージ機能を持ったタップから電力を取るのが現実的だろう。

スキャナーは電源が落ちてもさほど困らない。いっぽうハードディスクは書き込み、読み込み中でなかったとしても電源が落ちるとデータの破損または物理的破損につながりやすい。このように優先順位をつけ、Macと外付けハードディスクは最低でもUPSから電力を供給できるようにしたい。UPSは出力できる電圧と電流の上限がある。Macと外付けハードディスクの駆動を維持するとなると消費電力は300W以上になり、これらを余裕を持って正常終了させたいとなる。とすると、UPSは300W以上の消費電力を賄え10分くらいは電力を供給できるものにしたい。

停電時以外でもUPSが有効に働く場合がある。スタジオでもないかぎり大型ストロボを宅内で使用したりエアコンが稼働している場合など一時的に電圧が下がり、Macと周辺機器が正常に稼働しているように見えても何かしらの不都合が生じているケースがある。このような場合も、無停電電源装置があれば機器とデータの安全性が確保される。

UPSには交流を正弦波で出力するものと矩形波で出力するものがあり、一般的に前者のほうが高価だが機器の安全上好ましい。

不測の自体によってデータを失わないために、次はバックアップの保存態勢を整えたい。バックアップは、ローカルな環境にストレージを用意する方法とクラウド環境のストレージを利用する方法の二種類がある。どちらがより安全かとなると、クラウド環境のストレージを利用する方法になる。なぜなら、常にバックアップのバックアップが取られ、サーバからハードディスクまで耐久性の高い機器が使用されているからだ。また震災によって博物館のローカル環境に保存されていたデータが失われたことからわかるように、危険を分散させる上でもクラウドストレージは有効だ。Macユーザーなら、iCloud Driveをクラウドと意識せず使用できる。他に、Drop BoxやGoogle Drive、商用向きではamazonのストレージなどがある。

だが、画像データのすべてをクラウドストレージに保管するとなると10数TBの容量を借りなければならなくなるだろう。また、いくら高速な回線があったとしてもRAWデータやTIFF、しかも大サイズの画像を送信するのは面倒だ。となると、クラウドストレージを利用するとしてもローカル環境にバックアップを保存できるようにしなければならない。

バックアップ機能「Time Machine」がOSXに統合されているのは、Macユーザーにとって心強い。Time Machineを使えば、Mac内の設定やアプリケーション、内蔵ディスクのデータだけでなく、外部ストレージのデータも逐次バックアップできる。私は4TBのハードディスクをTime Machine専用にしているが、日々増えるRAWデータ、生成したTIFF画像をバックアップしてもかなり余裕がある。問題は、Time Machine用のディスクを含め保存環境をどのように組み立てるかだ。

いまのところ保存媒体はハードディスクがもっとも容量あたりの単価が安い。ハードディスクの接続方法はUSB3.0で転送速度はまったく問題ない。なのだが、私はeSATAで諸々のハードディスクを接続している。

SATA HDD/SSDを最大5台搭載可能なハードディスクケース(リムーバブルケース)を用意し、ここにTime Machine用の3.5″ 4TBのハードディスクのほか他のベイに6TBのディスクを入れ、ハードディスクが故障するたび入れ替えを行っている。このようなハードディスクケースはUSB3.0に対応しているものだが、eSATAにも対応しているものを使用してeSATA接続にしたほうが好ましいだろう。なぜならMac内部からUSBによってハードディスクにデータを転送するとき一旦、内蔵用の信号を外付け用の信号に変換し、これをディスクケース内でふたたび内蔵用の信号に復号している。この信号の変換時に誤りが起こり、これがハードディスクに記録される様々なデータの破損を引き起こす。内蔵用信号のままデータを転送できるeSATAは、復号によるデータの破損だけでなく、変換・復号の手順が必要ないため理論値に近い高速な転送が可能でもある。

だが、eSATAポートが用意されているMacはない。拡張カードをインストールできるMacであれば、カードを差し込みポートをつくる。ではiMac等の拡張カードをインストールできない機種はどうするか、だ。このような機種には、Thunderboltポートを使用する変換機が販売されている。バスを外部に引っ張り出してeSATAのインタフェースを実装したようなもので、このような変換器には他にUSBポート、オーディオインターフェイス、ディスプレイ信号のインターフェイスが実装されていたりする。私は、ThunderboltポートからeSATA、USB3.0、ディスプレイ信号を取り出しているが、それぞれまったく問題なく同時に稼働している。

全体像は以下のようになる。

system1

 

私はSATA HDD/SSDを最大5台搭載可能なハードディスクケースを使い、ここに内蔵用として販売されているハードディスクを購入してセットしているが、ハードディスクも機械でありいつか寿命が尽きる。寿命が長いサーバ用に特化したウエスタンデジタルのREDをハードディスクとして使用し、寿命の公称値を超えたあたりで交換の時期を検討しはじめることにしている。ハードディスクをレイド、ミラーリング等して同じデータを複数のハードディスクに記録するのも手である。なのだが、Time Machineが使用できるならここに任せてしまっても問題ないと感じる。

Time Machineを使い始める際、最初の1回めのバックアップはバックアップするデータが多いととても時間がかかる。一晩中かかる、と言っても過言ではない。もしローカルにデータが大量にある際は、「システム環境設定」から「Time Machine」を選択し、詳細設定項目でバックアップしたいデータの一部を除外し、二回目以降すこしずつ増やして行く方法をとると「Time Machineが働きっぱなし」になるのを避けられる。また私のようにMac本体内のデータだけでなくローカルストレージのデータもバックアップするなら、やはり詳細設定項目でストレージを指定してやる必要がある。

Fumihiro Kato.  © 2016 –

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