現像・モノクロとフルカラーの間に違いはない

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デジタル化によって写真は、製作にまつわるあらゆる段階で作業を柔軟なものにした。特に、色を自由に扱えるようになった点は写真表現をまったく別ものに変えたと言える。第一回、第二回と作業手順に従いテーマを設定したが、今回は(モノクロ化においては手順のままだが)手順からやや距離を置いた作業についても叙述する。

デジタル写真のモノクロ化には、RAW現像ソフトを扱ううえで二通りの方法がある。ひとつはUI上のモノクロ化(フィルター効果等の説明がある)設定を使用するもの、もうひとつは「彩度」調整を0にする方法だ。彩度を0をするとき、画像はどのように変化しているかをまず考えたい。

色には彩度と明度の要素がある。明度は文字通り「明るさ」だ。無彩色グレーの階調を見てわかる通り、明るさの変化で黒は白へ(あるいは白は黒へ)と階調上の位置が変わる。赤(R)、緑(G)、青(B)の各色は明るさが変わることで階調を描く。無彩色にはない、色が持つ性質として鮮やかさがあり、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色は鮮やかさが変わることで階調を描く。

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このように、特定の色は明度と彩度双方の性質の階調上に位置している。では、RGBの各色をRAW現像ソフトで「彩度を0」にしてみる。

color1
color2

先に、RGB各色における「彩度」のグラデーション中の最も彩度が低い状態と違うのが理解されるだろう。これは「彩度」を上げ下げするとされる機能ではあるが、実際はフィルムの特性に似せて彩度を下げているからだ。モノクロフィルムは、光の波長ごと感度が異なっていた。これをモノクロフィルムの感色性と言う。一般的なパン・クロマチックフィルムでは、可視光線すべてに観光するが青で最も感度が高く、赤に対して感度が低い。このような特性で自然界のフルカラーを撮影したときの、モノクロに変換された様をRAW現像ソフトがシミュレーションして「彩度を下げている」のだ。

彩度設定を0にしたものを、モノクロ表現としてももちろんよい。

2016_21481
Neoclassicism

例えば、私のこの作品は彩度設定を0にする方向で色を抜いている。方向で、としたのは緑以外の色は彩度を完全に抜き、緑のみやや残しているからだ。ディスプレイ上では判別できないかもしれないが、オリジナルプリントで緑をやや残した効果はあきらかな違いとして現れる。

では、フィルター効果とされるモノクロ化の作業はどのようなものか示す。

フィルターとは、フィルム撮影に使用された赤、黄色、緑、青等のフィルターを意味する。RAW現像ソフトでは、より緻密なコントロールを可能にするためシアンなどより多くのフィルター効果が実装されている上に、複数のフィルター効果を同時に使用できるようになっている。

彩度0の調整がフィルムの感色性に添うように設定されていることを前述した。だが、モノクロ化される階調を独自のものにしたいとき、RAW現像ソフトが内蔵している色の解釈だけでは物足りない。そこで、赤、黄色、緑、青等の色域を個々に明るく、暗くするためフィルター効果が用意されている。フィルターの効果を以下に示す。

_dsc7211_20161121_21872-1これは彩度0を選択したもの。

_dsc7211_20161121_21872-2これは青とシアンフィルターでこの色域を暗くし、赤と黄色フィルターでこの色域を明るくしたもの。

_dsc7211_20161121_21872-3これは先の効果に加え、彩度調整を高めに上げたもの。

_dsc7211_20161121_21872-4これは、これまでの青、シアン、赤、黄色のフィルター効果、彩度を上げる効果に加え、色温度を寒色方向に振ったもの。

モノクロ化とされる調整は、彩度を0にする、フィルター効果を使用するだけでなく、フィルター効果を使用(調整0のままでも)して彩度を上げる、色温度調整(色かぶり調整も)使用できる。彩度を上げれば、色あざやかな状態にフィルターをかけるのに等しい効果があり、色温度調整を使用すればカラーとしてはおかしな色調になるが劇的な効果が得られる。Capture Oneではマスクして選択した領域のみ色温度調整(色かぶり調整も)が可能なので、さらに微細にモノクロで描かれるトーンを変化させられる。

つまりモノクロ化ではあるが、元画像の色調をグレーの階調に置き換えるのだから、色を操作している点においてフルカラーを扱っているのと違いはないのだ。色をグレーの階調に置き換えるとき、むしろ色について意識的にならなくてはならないのだ。

Fumihiro Kato.  © 2016 –

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