ストロボの出力について(出力、状態、ISO感度、距離)

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当WEBページへアクセスする人のなかに、特定ストロボの名称や出力撮影対象を挙げて検索している人が常に一定数いる。目的があってストロボを購入しようとしている人、手持ちのストロボでこれまで撮影したことのない分野を試みるとき不安になる人たちだろうか。

「このストロボはXX撮影に使えますか」「この出力ならXX撮影に使えますか」的な疑問や不安だ。

この記事では、ストロボの出力と被写体に与えられる照度(明るさ)について知っておかなければならない基本事項を説明し、そのあと出力と照度と撮影についてざっくりした荒っぽい話をしようと思う。

最初に結論と結論の背景を書いておく。

写真がデジタル化された現在、
・ストロボは200〜250Ws、300Wsクラスであれば一部の撮影を除いてなんら問題なく使える。

デジタルカメラを使った撮影では、
・カメラ側のISO感度設定をストロボの出力調整機能のひとつとして擬似的に使えるし、積極的に使うほうが賢い。
・だから200Wクラスのストロボでもかつての400Ws超のストロボのように使える。
以上。

前提として、ストロボの出力は高ければ高いほど正義なのは事実だから、本体のサイズ、重量、価格、使い勝手が許せる範囲で可能な限り大出力機を選択すべきだ。

ただし70Ws程度のクリップオンストロボの直射と、数百Wsの大型ストロボの発光部にリフレクターをつけただけとかアンブレラやソフトボックスをつけたケースは比較が難しい。放電管の前面に弱いフレネルレンズがあり集光されているクリップオンストロボのほうが、条件次第で大型ストロボより被写体面での照度が高い場合があるのは知っておきたい。(あくまでも出力と得られる照度の話であって、その光が使いやすいか、使いどころがあるかとは別である)

クリップオンストロボはフレネルレンズによって集光されるため効率がよく、70Ws級なら300〜400Ws級にリフレクター装着のみの状態と互角の照度が得られる可能性があるが、照射角をズームする機能をつかって広い配光にするなら効率は極端に落ちる。

この比較に限らずストロボの出力と得られる照度の関係と、その照度で何ができるかは、ストロボの出力、ストロボの状態(または機能)、撮影時のISO感度、ストロボから被写体の距離を条件にして考えなければならない。

「このストロボはXX撮影に使えますか」「この出力ならXX撮影に使えますか」
に対して
「はい」または「いいえ」
のように安直に答えは出ないし、もし答える人がいたとしたら随分いい加減な回答と思ってよい。

まずストロボの出力。

各社クリップオンストロボのフラグシップまたはもっとも大光量の機種は70Wsくらいの出力だ(60〜70Ws程度)。

クリップオンストロボの出力表示は、被写体までの距離に応じて絞り値を決める際の参考にするGN(ガイドナンバー)が使われる。

かつてGNはISO100、照射角(ライカ判フルフレーム)50mmの画角相当など標準的な使用状態を想定した数値がカタログや製品名に使われていた。(ズーム機能がない機種ではISO100、35mm画角相当などというものもあった)

最近は出力を大きく見せるためズーム機能で照射角を絞って集光した100mmや200mmレンズの画角相当時のGNが使われる例が多い(50mm相当の画角まで光を広げるのと200mm相当へ集約させるのでは、被写体までの距離が同じなら後者のほうが照度があがってとうぜんだ)。

こうなるとメーカーごと、機種ごとGN算出の元になる条件が違うので、ストロボ同士を比較検討するときGNを直接比べても意味がなくなった。また出力と得られる照度を直感的に把握したいのに、200mm相当の画角などとストロボの使用実態とかけ離れがちな焦点距離を示されてもピンとこないところがある。

クリップオンストロボの出力をWs数で表示する習慣がないのは、カメラのアクセサリーシューに載せて被写体へ直射する使い方が主流だからで、TTL調光など自動調光がない時代はGNを被写体までの距離で割って絞り値を割り出していた。同様の計算でWs数から絞り値を決めるのは不可能なので、出力をGNから読み取るのは合理的だったのだ。

TTL調光が可能になった現代でも、距離から絞り値を割り出せるGNは被写体面の照度を直感的に把握しやすいため使用され続けている。とはいえ、前述した照射角ばらばら問題は業界で統一した表示法にしてほしいし、クリップオンストロボにもWs数を表示するようにしてもらえるとありがたいのだが。

大型ストロボの出力をGNで表示する習慣がないのは、直射で使用するのは稀でアンブレラやソフトボックスなど使用し拡散装置による光量の減衰は装置と装置の使い方次第でケースバイケース、しかもカメラ上部に設置するのではなく自由に配置するため被写体との距離はメジャーで計測するほかなくGNを使うメリットがほとんどないからだ。(カメラの位置に発光部があるクリップオンストロボでは、ピントを合わせてレンズの距離指標を読めば被写体までの距離がわかる)

GNは距離Xmに到達する光量を絞り値に反映させるための値で、Ws数はストロボがどれだけ仕事をするか示している。しかしWs数は理論値なので実際の効率は加味されていない。だから放電管むき出しで発光させた場合だけでなく、装着するリフレクターの形状、アンブレラやソフトボックスの構造次第でも効率が変わり得られる照度もとうぜん変わる。

Ws数をGNへ、GNをWs数へ変換するのは無理なので変換するための計算式はない。大光量クリップオンストロボが70Wsくらい、というのは光量の実測値から推定した値だ。私も実測したうえで70数Ws程度であるのを確認している。

ストロボの状態(または機能)次第で得られる照度の違いとは、上記したフレネルレンズの有無、直射か否か、拡散や反射の条件等々で変わるのを言い表している。

十分拡散された光は、拡散されているのだから直射より光量が落ちる(原液を水で薄めるようなものだ)。そのかわり光は無個性になり、無個性ゆえに使い勝手がよくなる。拡散度が高くなればなるほど光量は落ち、光の個性もまた減って行く。

ストロボの直射やストロボにスヌートやフレネルレンズ をつけた直射は拡散度が低い個性的な光(ギラギラしていたり陰影を強くつくったりする光)ゆえに、使い勝手がよいとは言い難い。ただし光量を稼げるのはメリットだ。

また、この項目にストロボの増灯を含めておきたい。

同方向へ発光させるときストロボ1灯と2灯の照度の違いは、1灯に対して1EV=絞りまたシャッター速度1段分増加する。

1灯を2灯にすると1EV、2灯を4灯にすると1EV、4灯を8灯にすると1EV増加する。

1灯から2灯=1EV増、1灯から4灯=2EV増、1灯から8灯=3EV増。

ストロボの数を増やして明るくして絞りを3段絞ろうとすると、ストロボ1灯から8灯に増やさなければならない。2灯、4灯は常識の範疇だろうが、8灯もストロボを用意するのはただ事ではないはず。これがライティングにおける3EVの価値だ。

70Wsを2台でも、300Wsを2台でも増加するのは同じく1EV分(絞り1段分)。3EV増加させるなら、どちらも8灯まで増やさなければならない。それなら最初から可能な限り出力が大きい機種のほうがよいだろうし、とはいえストロボそのもののサイズや重量その他も考えなくてはならない。

たとえば──
70Wsクラスのクリップオンストロボ×4灯=280Ws相当で同出力1灯と比較して2EVの増加。[4灯を妥当と考えるか、それとも多すぎると考えるか]
300Wsのストロボを1灯フル発光させた場合と600Wsのストロボを1灯フル発光させた場合は1EVの差。[600Wsをパワフルと考えるか、たった1EVしか明るくないと考えるか]
と評価が分かれるだろう。
評価は人それぞれ、用途ごとそれぞれとしても、300Wsクラスは頃合いのよい出力ではないかと私は考えている。

(ちなみに1灯から2灯=1EV増でGNは√2乗=1.414倍であって、2倍ではない。3台→√3乗=1.732倍、4台→√4乗=2倍となる)

撮影時のISO感度について。

ストロボの発光量は同じでも、カメラに設定するISO感度を上げ下げしたら絞り値は変えなければならない。太陽光の下やLED照明で撮影しているときも同じであり、とくに理由を説明する必要はないはずだ。

これは小さなクリップオンストロボでもスタジオ用の大型ストロボでも同じなので、ISO感度を容易に変更できるうえに高ISO感度でもフィルムより圧倒的に画質がよいデジタルカメラでは、出力が足りないならカメラ側で感度を上げれば済むようになった。ISO100の設定から200や400に変更するのは苦でもないだろう。

つまりフィルムを使っていた時代よりストロボの出力が小さくても十分撮影できるようになったとも言える。

フィルムではISO64〜100クラスとISO400クラスは画質が歴然と違っていたし、撮影中にころころ感度違いのフィルムを交換するのは面倒な操作だった。

ストロボの出力とISO感度が車の両輪の関係なのはとうぜんだが、デジタル写真では更に一歩踏み込んで「ISO感度でストロボの出力を(擬似的に)コントロールする」くらいに考えてもよいように思う。

ストロボには調光機能がついているので、まずは必要な光量を設定する。このとき出力があきらかに足りない場合や、出力を絞ってチャージ(充電)時間を短縮させたいときなどは、カメラ側のISO感度を上げて対応する。

1灯だけのライティングなら言わずもがな、多灯ライティングならそれぞれの光量と光量の比率が決まったあと、カメラ側のISO感度を1/3段階で上げ下げ全体の明るさの微調整にも使える。

カメラ側のISO感度設定を
・小・中出力ストロボを大出力なみに使うため使用する。
・擬似的な出力コントロールに使用する。
・1/3段階で上げ下げして全体の明るさを微調整するため使用する。

これらを積極的に活用したい。

最後はストロボと被写体までの距離だ。

距離が離れるに従い照度が落ちる。これもまた自明の理すぎる話かもしれないが、いざストロボを選択しようとするとき忘れている人がいそうだ。

光が当たる面の明るさは[距離の2乗に反比例する]=距離の逆2乗法則がわかれば、GNの理屈もわかるし、効果的にストロボを使うための設置位置もわかる。出力が正義なのは、出力が大きければ光が減衰したとしても照度を稼げるため設置位置の自由度が高いからでもある。

距離と照度の落ちかたを、-1EV(絞り値またはシャッター速度いずれかの-1段分)ずつの変化で表すと以下のようになる。

1.0,1.4,2.0,2.8……という数字の並びに見覚えがあるはずだ。このどこかで見た数字=距離ごと1EVずつ光が減衰すると憶えておくと記憶の定着がよい。

出力の大小問わず距離の2乗に反比例して暗くなるのは変わりないが、わずか1mと1.4mで-1EV、1mと2.0mで-2EV……となるとストロボをどこに配置するか、どこに配置できるかかなり重要になるのが理解されるだろう。

思い出してもらいたいのは、1EV分明るさを増すには同出力のストロボが2灯必要だし、2EVで4灯、3EVで8灯も必要になる事実だ。

また灯数に限らず、1mと1.4m=1EV差は300Wsと600Wsの出力差で得られる露光値1EVの差に等しい。ストロボを40cmだけ被写体側へ近づけられるなら、600Wsのストロボではなく300Wsで間に合うのだ。あるいは、600Wsの出力を1/2まで絞って使える。

1mと1.4mの例に限らず、他の距離差にも言えることだ。

もう一度、確認。

ストロボの出力と得られる照度の関係は、ストロボの出力、ストロボの状態(または機能)、撮影時のISO感度、ストロボから被写体の距離を条件にして考えなければならない。

つまり撮影実態を具体的に想定してはじめて考えられるのだ。

たとえば集合写真(一列または数列に並んだ人を撮影する写真)でストロボを使いたい場合、列の幅と幅を画角に収めるためのレンズの画角とワーキングディスタンス、ストロボの配置位置、日中シンクロをフォーカルプレンシャッター機で撮影するのか屋内撮影か、といった要件を具体的に考えないとライティングを組み立てられない。

ライティングが具体的に想定されて、ストロボに求められる条件が決まる。ストロボの特性を理解していれば、ストロボの条件からライティングを組み立てられる。どちらかが曖昧なままでは、機材の適否を知るのもライティングの組み立ても不可能だ。

冒頭で使った表現をするなら、
「このストロボは集合写真に使えますか」「この出力なら集合写真に使えますか」に対して
「はい」または「いいえ」
のように安直に答えは出ないし、もし答える人がいたとしたら随分いい加減な回答と思ってよい。

誰かが「使える」と言い、これを信じてやってみたら思い通りならなかった例があるとしたら、ほんのわずかな条件の違いで照度が激変したからではなかったか。

アンブレラやソフトボックス等装置の構造や使い方。ISO感度の設定。灯数。距離、等々の条件違い。繰り返し説明してきたように、わずかな違いが大きな違いを生むのだ。

集合写真を例にして話を進める。

「このストロボは集合写真に使えるか」「この出力なら集合写真に使えるか」──という疑問。この疑問の主は日中屋外で集合写真を撮影したかったとする。

日中の集合写真にストロボで補助光を与えるのは、
1.太陽に対抗したり凌駕できないまでも拮抗する照度をつくらなければならず
2.ただし被写体直近にストロボを置くのが難しい
ため、なかなか難しい案件だ。

だからこそストロボの出力について考えるとき興味深い事例と言える。

まず[日中シンクロをフォーカルプレンシャッター機で撮影するのか屋内か]。日中シンクロの集合写真なら被写体の顔をはっきり明るく描写するため補助光としてストロボを使い、同時に背景も適切な明るさに撮影したい案件だ。このとき重要なのは背景の明るさとバランスを取れるストロボの光量があるか否かで、前述した「ISO感度を上げれば出力が小さくてもよい」が通用しない。

フォーカルプレンシャッター機で日中シンクロに使えるシャッター速度はあまりに選択肢が少ない。シンクロ上限1/250秒のシャッターなら1/250秒より速い速度は使えず日中シンクロを難しくしている。

日中シンクロの露光値の決め方は、まず背景の明るさに対しての絞り値を決める。ISO感度を上げると、自ずと絞り込むかシャッター速度を速くすることになるが、微調整の範囲ではなく足りないストロボの光量を補うくらい感度を上げると両者が設定できる限界を超えるだろう。

ISO感度を上げるにしても下げるにしても、自然光の背景側とストロボ光の被写体側双方等しく感度の影響を受けるのだし、シャッター速度の選択肢が少なく太陽に対抗するには大出力であっても弱々しいストロボ光なのだから、一般条件通りISO感度で出力の低さをカバーできる訳ではない。

さらに集合写真なのだからカメラと被写体間の距離は4〜6mくらい(もしくはそれ以上)は離れるだろう。ストロボは画角に入らないよう撮影者近くに配置せざるを得ないから、被写体面の照度は露光値として4mで1/16(-4EV)、5.6mで1/32(-5EV)まで減る。

影っぽい表現を明るく持ち上げる補助光にすぎなくても、効果を最大にしようとすると難しいものがあるのだ。

大型ストロボを使い光量減を避けるため発光部+リフレクターのみにしても、集光力があるフレネルレンズ 付きのクリップオンストロボの直射のほうが条件次第で有利になるケースだ。

集合写真でかつて国内最大のシェアを誇っていたミニカムジャイアントは300から700Ws級クラスのバッテリー式電源部に発光部を最大2灯を接続でき、発光部には専用のフレネルレンズが付属している。つまりフレネルレンズ 付きの300Ws1灯、同150Ws2灯(計300Ws級)、同350Ws2灯(計700Ws級)といったところが、晴天下の集合写真で影っぽい表現を明るく持ち上げる補助光の相場で、よりはっきり確実な結果を得たいなら300Wsを超える出力が求められる。

いっぽうで屋内での集合写真撮影なら光量の不足をISO感度で賄う方法が容易にとれそうだし、スタジオや同等の暗い場所なら容易さが増す。光を拡散させるアンブレラやソフトボックス等の装置を使ってライティグできる自由度が広がる。

[余談:ストロボ製品の出力ラインナップとウェディングフォト/
現在注目を集めているメーカーにProfotoとGodoxがある。このふたつのメーカーの主力製品ラインナップから読み解けるのは、主に北米のウェディングフォト(結婚写真)市場に求められるストロボの出力の傾向だ。
ふたつのメーカーは70Ws程度のクリップオンストロボ、200Ws程度または300Ws級、400〜600Ws級といったバッテリー駆動ストロボをラインナップしている。
クリップオンストロボは機動力と省力化。200〜300Ws程度のものが出張撮影用の中核製品。400Wsを超えるものはスタジオでの凝った撮影または日中シンクロ用。と、考えることができそうだ。
北米を中心としたウェディングフォトの需要と内容は、日本の写真館で撮影される記念写真または式や披露宴のスナップと違い、雑誌のグラビアフォトや映画的演出をした写真をシチュエーションを変えて何カットも撮影し簡単な製本までするものに根強い人気がある。中国にも同様の文化がある。
これらメーカーの製品はもちろんウェディングフォトだけに使われている訳ではないが、ウェディングは無視できない市場であり数が売れる市場なのだ。
そして機動力と省力化、出張撮影用、スタジオでの凝った撮影または日中シンクロ用というカテゴリーは、ウェディングフォト以外の分野にも適応できる。写真のデジタル化以降、省スタッフ化が進んでいるし、デジタルゆえの機動力がとうぜんのように期待されるようになっている]

では、出力と照度と撮影についてざっくりした荒っぽい話をしよう。

300Wsくらいあればなんとかなるし、日中シンクロだけは様々だな、でこの話のほとんどはおしまいだ。

最近は200〜250Wsのストロボがなかなかの人気になっている。個人的には300Wsくらいが頃合いよしと感じるけれど、サイズと出力ともにバランスよく取ったところが200〜250Wsなのかしれない。ストロボのトレンドの変化に、低ISO感度のフィルムでなければ良好な画像が得られなかった過去とデジタル化時代の違いが端的に現れているのが興味深い。

そのうえでできれば300Wsがよいと思うのは、200〜250Wsクラスにクリップオンストロボたった1台追加した程度の差であっても、この余裕が生かされる場面もあるからだ。ストロボ1台分の光量や露光値1EVの貴重さは既に説明済みだ。

ただし、出力を語る上で特例的に難儀なのが日中シンクロだ。

本腰を入れて日中シンクロに取り組むなら300Wsでも足りない。だが大出力になるほどストロボの筐体サイズは大きくなり重量が増して取り回しが悪くなり、使いにくさスタジオや室内で使用する際の比ではない。閉鎖空間に近い環境や室内での日中シンクロなら困難は少ないが、屋外では助手を使ったとしても万全な体制で臨むのは難しいかもしれない。

スタンドを立てたり、立てたスタンドが倒れたり、倒れた弾みでストロボが壊れたり、撮影のリズムがしっちゃかめっちゃかになったり、助手に手持ちさせても気が利かない人ならスタンド以下の仕事しかしないなどなど。

困難を少しでも解消する手立てをストロボの出力に求めるか、出力をあきらめ機材の軽量小型さや使い勝手に求めるか選択しなければならない。

次は増灯。

照度を増すための増灯で、3EV分を得るため8灯も使うなんて非現実的だ。クリップオンストロボなら4灯、大型ストロボなら2灯までが現実的ではないか。説明した通り、クリップオンストロボなら4灯で300Wクラス、大型ストロボなら2灯にしても1EV分の増加にすぎない。

増灯で光の面を大きくする工夫は有効だが、必要性は案件と事情しだいとはいえ光量と照度を増すために増灯するのは微妙なところがある。こうした場合、デジタル撮影ならISO感度を1EV分あげたほうが増灯したストロボの管理やら不発光を心配する必要がなくてよい。

とりあえずは前述のように1灯あたり200〜300WあればISO感度の調整も加味してほとんどの用途に使える。使いにくかったり、条件によって使い物にならないのは日中シンクロくらいなので、これは別途実情にあわせて対応するほかない。

そのうえで「このストロボはXX撮影に使えるか」「この出力ならXX撮影に使えるか」と悶々と逡巡するのではなく、脳内でもチラシの裏でもいいから撮影状態を平面図や立面図に書き出してライティングを想定するのをオススメする。

XWsでどのくらいの照度が得られるか直感的に理解できていなかったとしても、すくなくとも距離で照度を稼げるか否かはわかるだろう。また、どのくらい減衰せざるを得ないかもEV値でわかる。

脳内シミュレーションに不慣れなうちは面倒臭がらずなるべく平面図だけでも書こう。多様なライティングを発想し実現性を確認する助けになるだろうし、そもそも想定できないならどんなストロボを買っても使いこなせないことになる。

シミュレーションによって1灯の出力と配置が現実的か、多灯のバランスが取れるかそれぞれのストロボと対象までの距離から推測したり、同じライティング効果が得られ照度に余裕がもてるストロボの配置が見つかるかもしれない。

悩み尽きない人はもっと困難な事情があるだろうが、とにかく図に落とし込みながら考えると解決の糸口が見つけやすくなる。

ストロボの出力にまつわる問題に限らず、写真は理詰めで撮影を構築していかないといつか壁に突き当たる。数学や暗算が苦手でも、GNは憶えてしまえば簡単に扱える係数だし、XWsの出力と被写体面の照度と使える絞り値の関係などは実際に撮影をしていれば直感が養われるから、理詰めと言っても怯える必要はまったくない。

そのうえで、当記事で説明した光の特性は理解しておきたい。

灯数と明るさ。距離と明るさ。この2点がわかっているだけで、ライティングにまつわる理詰めの作業はほとんど可能だろう。

© Fumihiro Kato.
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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なる人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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