一周回って4/3なんて話はまったくないけど

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前回、しょうもないお散歩がてらの写真を掲載して撮影に使用したカメラはオリンパスのE510であると書いた。

このカメラは干支が一周回るほど昔のカメラで、デジタルへの移行期に期待せず様子見で買いデジタル特有の癖や限界や可能性を知るうえで役に立った。けれど、デジタルだからといってフィルムのフォーマットとまったく別のサイズでもよいというのはありえず、特に被写界深度のコントロールが効かないところや光学ファインダーが使い物にならないのはよい勉強になった。

なんだけど、ずっと防湿庫どころか普通に室内に置きっぱなしになっていたE510を昨年なんとなく使い始めたら、かつてどうしようもなかった白とびとか描写の詰めの甘さがRAW現像ソフトの性能向上で、どうにか使い物になるレベルとか気にならないレベルに改善されていたのだった。

私はCapture One ver.12を使ってそう感じたし、現在のver.20では更なる現像エンジンの進化があったのには驚いた。というのもここ数年の機種を使用してCapture One ver.12と20の違いはそうそう感じるものではない。E510は12年前のカメラだしマイクロでさえない4/3だしで、基礎体力というか性能の絶対値が低いため、現像ソフトの向上が覿面に現れるのだろう。

Capture One以外にいくつか現像ソフトを所有し使っていて、DxO PLとLightroomはCapture One 20ほど劇的な差はない。とはいえ12年前とは明らかな違いがあるので[オリンパスE510を持ち出した話🔗]という記事を以前書いた。

では、しょうもないお散歩がてらの写真を再掲──
(なお現像時にあれこれ手を入れている)

そもそも画素数が1000万画素の4/3型LiveMOS、とうぜんローパスフィルター付き、RAWは12bit。

現在の高画素かつセンサーサイズが大きいカメラと比較すると解像しているように見えても大味、大雑把な塊で細部が構成されている写真になる。

前掲の写真のうち擁壁と水抜きのパイプの写真がまさにこれで、パイプの切り口のノコの跡は鋭く見えるけれど大雑把な塊で描写されているし、擁壁のモルタルの描写も。だけど、これはこれでありかなと思わされるものになっているのは現像ソフトの向上だ。(たいした写真ではないけど、参考までにクリックまたはタップで拡大できる)

この大雑把感はスマートフォンの極小センサーと小さなスペースに押し込まれたレンズのアレとも違う。どちらが写真的かというと、私はE510の描写のほうが圧倒的に写真らしく感じる。

たとえば1枚目の落葉と椿の花の、色の密度とちょっとした色っぽさはスマートフォンにはないものだ。現代の感覚では解像が甘いけどね。

スマートフォンはソフトウエア処理で解像のエッジを立てたドーピング感など、写っていないものを写っているかのように見せかける処理がせせこましい。E510は時代なりの感じだけど、もっと視覚に近いおっとり感がある。

おっとりという点では、2枚目、4枚目の写真だろうな。とくに4枚目のシャッター、グレーチング、マット、タイル……いずれもカリカリしたところがなく写真的なリアルさが伴っている。(写真的リアル=視覚的リアルとは違う)

センサーサイズが4/3規格とあってライカ判と同等の画角を得るのに焦点距離は1/2となって、標準から中望遠域で被写界深度が深すぎて絞りの効果が効きにくいのでコンパクトカメラっぽく使うのがよい。というか、ここに限界がある。

あまり使い勝手がよいUIではないけれど、絞りもシャッター速度も測光モードもISO感度も任意に決められるのはいざというとき頼もしい。この辺りがどうしようもないスマートフォンや、なにかと制限があったり使おうとすると複雑化するコンパクトカメラより優れている。

なにより小さくて軽いしね。

でも、一周回って4/3なんて話はまったくない。

とはいえ最新の現像エンジンで古いカメラRAWを現像すると、かつて使いつくせていなかったカメラとレンズの能力を出し切ることができる。こうした写真はスマートファンなんかより自然だったりする。

たとえばフルサイズで同じくらいコンパクトで軽量で気を遣わず済むカメラがあったとして、そっちのほうがよいかとなる「どうかなあ」なのだ。もちろん、やりたいことをやりたいように出来るだろうけどね。

やりたいことが制限されていて、あまり期待しないまま使うあたりの緩さがよいと感じるのだ。E510はフードすらつけず、カバンやデイバッグに突っ込んだまま持ち運んでいるしね。

こうした古いカメラが手元にある方はひさしぶりに引っ張り出して、最新のRAW現像ソフトで現像するとよいだろう。でも敢えて中古で買うほどのものではないけれど。

© Fumihiro Kato.
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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なる人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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