発見者であっても創造者ではないのか

ずっと続けている砂景、海景の撮影を春先に大きくまとめる旅に出ようと計画しつつ、自分を振り返る撮影をほぼ1ヶ月行なっている。これはけっこう辛い部分があり、煮詰めたスープが入った鍋の底にたまった澱を水で割って更に煮詰めているような気分になる。放っておくと私はこうした写真ばかり撮るという見本でもあるし、だから過去からのすべてを再解釈しているようなものだ。だから辛いけれど、何かに立ち返るためのリセットに必要な行為だ。

このWallと題してこつこつ整理している写真は、ほんとうはThe Wallと題したいと思っている。ただ定冠詞のTheをつけて、皆が知っていて「あれのことだよね」と言えるものか疑問なので仮題は「Wall」で止めている。自分をリセットする撮影なんだけど煮詰まった撮影で思い出したのは、写真はどこまで行っても「発見」したものを提示する行いでしかないのかという疑問だ。

Wall

the wall

the wall

the wall

the wall

the wall

the wall

the wall

これらは「ほら、こんなものがあるよ!」「こんな風に見えるよ!」と語る写真だ。これらの切り口に興味がない人にはピンとこないものであるし、私のことを知らない人にはどうでもよいものばかりのはずだ。人が死んだり怪我したり、スキャンダラスなものは何ひとつ写っていないから素通りされてとうぜんだろう。例えば撮影したのが有名なタレントのAさんだったらAさんへの興味から写真に目が向けられて、Aさんの心情とか感覚にも興味が向けられて評価されたりされなかったりする。

ほら写真が好きなF.Mさんがライカで撮りましたと題されていたら興味を惹かれても、そうでないなら素通りでしょ?

前掲の写真はどこかにあるものを複写するように撮影して、私の名前で「どうですか」と提示しているにすぎない。私は構図や露光値を決めて現像方法を工夫しているけれど、それは発見したものを端的にするための行いだ。なにかを創造しているのではない、と思うのである。そして工夫や創作的な何かなんてものは、私に興味がないならどうでもよいものだろう。どこの馬の骨かわからない人が書いたエッセイなんて読まれないし売れないけれど、たとえ稚拙であってもタレントや大事件の当事者が書くと読まれるし売れるのと同じ現象だ。

何事も単純化して考えればよいというものではないし、極論めいたものを振り回すのはいかがかと感じる。なのでそっと胸の内に秘めてはいるのだけど、写真はどこまで創作物であるのかという問いは根深く難儀なテーマだ。極論するなら「だったらGoogle street viewでいいじゃん」なのだ。ストリートビューには感情や恣意性が排除されているから、場所の概要を知るための実用性が皆に支持されている。

まちがいなく「ほら、こんなものがあるよ!」「こんな風に見えるよ!」が写真の本質なのだろう。見つけた奴が偉い、見つけて撮影できた奴はもっと偉い。誰が撮影したかが重要。珍しいものごとが写っている点と発見の切り口だけが写真の評価基準なのかどうか、ほんとうに考えさせられのだ。命の危険を代償に無謀に紛争地に踏み込んで行く人が求めているものがそうであるように。

 

Fumihiro Kato.  © 2019 –

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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なり人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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