カメラとレンズは分離して運ぶのが基本さらにバッグについて

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カメラとレンズは分離して運ぶのが基本だが、さらにバッグについて考察する。

衝撃のエネルギーは質量と速度の2乗に比例する。これはどんなに頑張っても逆らえない法則だ。カメラにレンズを装着したままなら、それだけ質量が大きくなる。いかにマウント部が強固につくられているといっても、異なるパーツをつなぐ接合部であるのも考えなくてならない。そしてカメラもレンズも「超」がつく精密機器である。いずれか、あるいは両方の故障につながる要因は取り去るべきだ。カメラとレンズはあんがい簡単に壊れるのだ。

神経質すぎると感じられるかもしれない。たしかに私は機材に関してそうとう神経質だ。でも「精密機器運搬中」などと書かれたトラックが走っているのを目にしたことがあるだろう。他のクルマに対して気をつけてくれの意味もあるが、あのトラックの構造と荷室内部、そして運転は精密機器を運ぶにふさわしい注意に満ちている。民生用で酷使する場合だってあるカメラとレンズだが、繰り返しになるがどちらも「超」がつく精密機器だ。

ショルダーバッグやリュック形式のカメラバッグはけっこう安全ではないかと感じる。なぜなら徒歩で使用するものであり、歩行時の衝撃が機材に加わるとしても大騒ぎするほどではないからだ。振動の周期が大きく、人間の体が衝撃をかなり吸収している。ただし自動車に積み込むなら話は別で、またトランク型のケースであっても外装がいかに頑丈でも車載時の振動や突き上げから機材をどこまで守れるかわからないところがある。コロコロと引いて歩けるトロリーケースは便利このうえないが路面からの振動をモロに受ける。たいがいは大丈夫だとしてもだ。

トランク型のケースには中仕切りとわずかなクッションがついたもの、内部をウレタンスポンジで満たして機材の形に切り抜くものの二つに大別される。前者では機材を布等で巻いて収めるのが基本の使い方で、そうでもしないかぎり中仕切りの中で機材が動いてしまう。後者はこうした手間がからないが、大切なのは外装より内部のクッション性能であって、どれくらい振動・突き上げを吸収できるかとなると後述するが疑問が残る。サイズが限定され、持ち運びに不自由があり、価格が高いトランクでも振動・突き上げの影響を排除できないとしたら、クッションの質がよいショルダーバッグと車載時の向き不向きがたいして変わらないことになる。

なぜこのように感じるかといえば、過去にクッションで満たされたタイプを車載してクルマで長距離移動したとき、入念にダスト掃除してあったセンサーにチリがけっこう付着していたからだ。ミラーボックス内に残っていたチリが悪さした例だが、振動と突き上げがこうしたチリを壁面から落とした結果と言える。センサーを振動させるダストオフ機能でさえ、やたらに強い振動を与えられないためチリを完全に落としきれないのは皆さんが知っているとうりだ。m4/3はセンサーがあのサイズだからゴミ落としが強力なのであって、APS-Cであっても同等の振動を与えられないし与えても効力に限りがある。車載時の振動と突き上げはとうぜんダストオフの振動より強く、カメラやレンズにとって安全とは言い難い。

こうした経験から、私はウレタンで満たされたカメラケースを使わなくなった。鋭利なものが突き刺さるような状況では万全な対策と言えても、振動と突き上げには効果が期待できず、ある程度の落下には強いといっても飛行機のカーゴに預けられるほどではない。だったら収納力があり持ち運びが容易な別のタイプのほうがよいだろう。

振動と突き上げの懸念を如実に示す例がある。

A氏は機材を丁寧に扱う人だ。忙しいA氏は昔から使い続けているアルミトランクに機材を入れてあちらへ移動こちらへ移動していた。現像しているときA氏は特定のレンズに変調を感じた。片ボケならわかりやすいが、画像の左右で微妙に明るさが違っていただけでなくわずかながら偏心しているようにも見えるのだった。このレンズをぶつけたり落としたことがなく、こうなる直前にロケ先で不整路をガツガツと入り込まなくてならなかったのを思い出した。レンズは工業製品だし精密機器だから整備や調整が欠かせないとはいえ、メーカーに修理に出すのは話がややこしくなるからなるべく避けたいところだ。手元を離れる間はレンタルできるとはいっても下手すると修理あがりまで数週間かかり、戻ってきても完全に治ったか、別の不具合が出ていないかチェックしなければならないのだ。もし元どおりでないなら、再び修理に出すことになる。

最近は手ぶれ補正が入っているレンズが多く(カメラ内補正ならセンサーが動くようにしているし)、電源がOFFなら固定されているだろうとは思うがなんとなく気持ちが悪い。デジタル高画素に耐えるためレンズは重厚長大になる傾向があり質量が増しているのも気になる。またフィルムを使うなら気づかないレベルの異常がデジタルでは赤裸々に現れる。

私はマンフロットのショルダータイプバッグに機材を入れて持ち運んでいる。横幅があるだけでなく、高さ(深さ)があるタイプで、見かけはちょっと難があるが機能性は抜群で重量が軽い。レンズをつけていないカメラを奥行き方向に2台入れられ、こうすると残りの部分にもう一台カメラを入れてもレンズ数本を収めることができる。※カメラボティーのグリップ側を上か下にして並べると前述の2台収納の状態になる。レンズ付きでも前玉が大きいなど互いに干渉するのでないなら同様に併置できる。カメラボディ3台と単体状態のレンズもほぼ入る。

(この画像はメーカーのもので、収納のしたかたは別の方法を取っている)

大容量バッグなので肩に提げてワシワシと自然の中に分け入るのには(主に奥行き方向の厚みがあるので)向いていないため、作品づくりの撮影では移動先でピークデザインのリュック型に機材を移し替えている。この手の撮影では移動先でカメラのマウントキャップを開ける際にダストが入り込む懸念があるためレンズを装着したままの場合もあったが、A氏の話を聞いてもやもやした悩みが生じた。ここはやはりチェンジングバッグを使ってレンズを装着する習慣を徹底するほかなさそうだ。

マンフロットのショルダータイプバッグはクッションがこれでもかと入っているが、A氏の一件以前から収納の底にスポンジを一層入れていた。容易にカットできるようにマス目がついたアレを寸法に合わせてぴったり入れたのだ。これはクルマ移動にもっぱら使うバッグだからで、前述のハードケースでさえ振動・突き上げにどこまで効果的か疑念が生じたためだ。そして1機材あたりの質量を減らし接合部分を守るためカメラとレンズは分離するのを基本にしている。ただこれらもまた気休めではないかと思うが、やらないよりマシだろう。このほかHAKUBAのドライクッションポーチも使用している。(画像はメーカーサイトより)

私は機材に対して神経質だ。なぜなら撮影で後悔したり他人の期待を裏切れないからだ。機材が不調でしたは自他ともに言い訳にならないのである。

 

Fumihiro Kato.  © 2019 –

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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なる人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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