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いつもと同じ条件だったとしても、撮影台を置くスペースが変わるだけで思うようにならない場合がある。ブツ撮りの背景がたとえば18%グレー相当などと目論んでいたり決まっているなら、私は病的な均一主義者なので隅々まで18%グレー相当にしなくては落ち着かない。そこでタイトルの件となり、たった105×75cmの平面でさえ思うようにならない事態になった。
あれこれの事情でいつもと違う場所で撮影したと思ってもらいたい。これがスタジオに背景紙を立てるような場合は、そもそもスタジオなのだからスペースに余裕があり均一な濃度の背景をつくるのに苦労がない。ところが数十センチ四方の中に背景用のライティングを整えなければならなくなったので、スタジオで背景紙を照明するのとはあまりに勝手が違った。かくかくしかじかのセッテイングをすると撮影台のスペースでほとんどいっぱいいっぱいだ。
なので割り切って、背景ではなく被写体に影響が出ないような光の壁をつくることにした。トレペ越しの透過光を背景にして、この透過光で濃度を決める方法だ。これはよくある手だ。そこで「ソフトボックス」を背景にすればいいだろと言いたい人もいるだろうが、105×75cmを満たすソフトボックスがあったとしても隅々まで均一な輝度にならない。ソフトボックス のディフューザーの四隅は暗く、中央は明るいので病的な均一主義者の私にとっては却下なのだ。どんなに高性能なソフトボックスでも、透過光による背景としてはとてもとても使えたものではない。
基本の考え方は下図の①だ。ただし背景となるトレペとストロボの位置まで最大でも40cmを切る余地しかないため、①のままでは中央が明るく周辺が極端に暗くなる。
そこでトレペを二重にする②が考えられるが、2枚のトレペの間隔をある程度広げられてもここまでライティングに使えるスペースが狭くては到底均一な濃度の背景にはならない。そこで③に示したように、ストロボを白レフに反射させたうえで④のようにトレペ2枚重ねの背景をつくった。
これでそこそこいけるかな、と思ったがダメ。やはり30数センチのスペースでやりくりするのは難しい。均一な照度、結果として均一な濃度をつくりたければ、距離を離すのが手っ取り早く確実だ。②の二重トレペも、トレペ間を離すほどに効果的だ。もちろんストロボと対象、ストロボと反射面、反射面から対象の距離を取りたい。しかし、スペースが許さないのが今回の例である。
トレペの手前に(乳白というには)透過率が高い乳白板を設置。これでもダメ。トレペの奥、反射面側に布のディフューザーを設置して照度のムラがやや改善するも病的な均一主義者の私は満足できなかった。さてさてと一旦セッティングした状態を遠目(といってもせいぜい1m)で見て「あー」っとなった。
ストロボを増やすしかない。105×75cmの平面を照らすの2灯使うのは馬鹿げているように思えるかもしれないが、40cmより足りない助走距離でストロボ光は反射面を十分にカバーできない。なので、上下に2灯設置した。これでも105×75cmの平面をPhotoshopのバケツツールで塗りつぶすような完全に均一な濃度にするのは無理だ。とはいえ、かなり均一な濃度になった。なんだけど、ここまで反射と透過を繰り返すと色温度がどうしても低くなる。こればかりはどうしようもないので、被写体を照らすストロボ側にフィルターをかまして全体の色温度を下げるとかの話になる。
これ、背景を白飛びさせるならここまでやる必要はない。冒頭に書いたソフトボックスを設置するやりかただけでも十分で、被写体に影響しない範囲でストロボの光量を上げればよいだけ。ソフトボックスに限らずトレペ等であっても、厳密には中央と四隅方向で輝度が変化する。二重構造のソフトボックスの内側のディフューザーの中央に黒紙を貼っても、程度の差はあるものの中央から四隅方向にかけて輝度が落ちる。しかしラティチュードを上回る発光量にして白飛びさせると、カメラ側のダイナミックレンジを超えた明るさは1/3EV差でも10EV差でもみんな同じ白飛びだ。ラティチュードを超えて明るくすれば、(あたりまえだが)均一な白飛びになる。だから、洋服のカタログ用写真を抜きあわせ前提または角版でも紙やWEBページの背景の白と等しくするため、巨大なソフトボックスみたいなアンチョコ装置が売られていたりする。
白飛び未満の輝度の場合、どうしてもムラが気になる。ラティチュードの最大の明るさから1/3EVほど低いだけで、これがなだらかに変化していても気になる。だから今回は工夫せざるを得なかったが、それでも105×75cmの外側では照度=濃度がぐっと落ちている。気にしなければそれまでだし、あえてグラデーションをつくる場合もあるが、小さな面積でも条件しだいでは均一な濃度に仕上げるのは面倒くさいのだ。
Fumihiro Kato. © 2018 –
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