撮影行とクルマと駐車場

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夏が終わり人が海辺にいなくなって、私にとって撮影の季節がやってきた。まあそれと、夏の強いばかりで単調な光は私が求めているものではない。人出も光も九月になると如実に変わる。だが季節を問わずクルマをどこに停めるか結構頭の痛い問題だ。公共交通機関を使えば駐車場所の心配は皆無だが、ほとんどすべての撮影場所が電車やバスから見放されているのだし、更に現地を移動するとき1時間に1回くるかこないバスを待ってはいられない。ハイヤーのように貸切れる移動手段を用意すれば経費がバカにならないし、移動そのものが現地を知るうえで大切なので体の自由が効くうちは自分の力で動き回りたいと考えている。

私は自動二輪免許も持っているのでバイクで移動すれば(目的地が都会でなければ)駐車場所の心配はほとんどないのだろうが、機材の運搬と体力と天候を思うとやはり車輪が四つついて屋根があるクルマ一択にならざるを得ない。だから駐車場所が問題になり、往往にして撮影場所の直近は駐停車禁止範囲でなくても道幅が狭いなど路駐は難しい。

どうせ誰もこないから停めちゃえとできないのは、こういった場所の道路を生活道路として使用している人がけっこういるからであり、また車上荒らしが跋扈している可能性を考えざるを得ないからだ。一例を挙げよう。房総半島の南側は九十九里とならびサーフィンの好ポイントなのでサーファーがクルマでやってきている。しかもサーファーは一旦浜に降りるとなかなかクルマに戻ってこない。しかも彼らは着替えをするから財布などをクルマに残す。こうなると良からぬことを考える輩がどこかからやってくるようになって窃盗を働く。南房総は飛砂がすごい場所でだから私は足繁く通うのだが、飛砂の害を減らすため厚い防砂林が道路ぎわまで迫っていて、それでなくても砂が吹き寄せられ道路際に山を成していたりするので浜辺から駐車したクルマが見えない。更にフラワーラインをはじめとする海沿いの道は交通量が多くないので、泥棒ががさごそやっていても目に付きにくい。誤解してもらいたくないのは南房総に限った話ではないところだ。

駐車場と言っても様々で、市町村がつくった無料のものからホテルなどの宿泊施設が貸し出しているものまである。前者の場合のほとんどでは管理人がいないし、ただただ敷地が用意されていて白線が引いてあるだけで前述の路駐と変わりない様相のところが多いのだけど、泥棒の心理は不思議なものでやや盗む気が失せるらしい。という話を現地で聞いた。なんだけど確実なのは、宿泊施設や観光施設の来客用駐車場を時間貸しや1日料金で貸している駐車場だ。もっと言えば、人通りと監視の目がある駐車場内の枠を選ぶのが重要だ。撮影のためクルマを停める場合、サーファーと違い金めのものは撮影ポイントまで持ち運ぶのだけど泥棒はサーファーと撮影者のクルマを見分けられないのだし、こうして車内にアクセスされるなんて気持ち悪い。最近のクルマはイモビライザーがあるからやたらに電源とエンジンがオンにならないからウインドウを割られるだけで済むかもしれないけど、割られたときの損害や精神的な被害はべらぼうだ。

では、適切な駐車施設があるかである。あったとしても、撮影ポイントと離れていたら意味がない。まあこれが最大の問題で冒頭の話に戻ることになる。

したがって撮影場所のアタリを付けたら駐車場所を探すことになり、これが結構な手間だし最適解を得られなかったりする。カーナビには駐車場表示や探索機能があるけれど、公共の駐車場があれば御の字で場所柄そもそも駐車場が圧倒的に少ないくて有効な手立てとは言い難いケースばかりだ。ホテルや観光施設が利用者以外に貸し出している駐車場はカーナビに掲載されていないことが多い。こうなると事前のネット検索とGoogle Mapに頼るほかない。撮影ポイントの周囲をMapで見回したり、検索して施設のホームページや評判などを見るなどして駐車場として使えるか確かめる。これでもわからないことがあり、ペグマンをMapに落としてストリートビューで時間貸しの看板や注意書きがあるかどうか見たりする。私の場合、ペグマンの視点になってストリートビューで探し当てる割合が8割以上だ。というのも、施設の方針が変わって施設利用者以外駐車禁止にしているケースがあって口コミが古い場合は役に立たないし、また逆にストリートビューの撮影が古くて現地が様変わりしていることもあって100%信じることができない。施設に聞けば間違いないのだけどね。

クルマを運転しない人は「道の駅」と聞いてもピンとこないかもしれないが、地図上で道の駅を見つけただけでかなりほっとする。道の駅は高速道路で言えばパーキングエリアのようなもので、官民で建設の推進をしていて運営は民間がやっている。最近は自販機だけの道の駅はほとんどなく、トイレ休憩だけでなく食事や買い物ができる。そして人の出入りが頻繁なので安全な道の駅を駐車場として利用できるうえに、休憩だけでなく何か非常事態があった場合に使い途がある。で、ここでも「なんだけど」なのだが東京と神奈川にはほとんど存在しない。神奈川の沿岸部には、いまのところ存在すらしない。

こうしたクルマでの撮影行に出かけているうちにわかってきたのは、海辺に限った話かもしれないけれど駐車場所が撮影ポイントの直近にない場合でも1〜2km圏内になんらかのクルマを停められる場所があることだ(もちろん存在しない場合もあるけどね)。舗装路や直線で結ばれる道だけでないから時間はあくまでも見当だが15〜30分くらい歩けばなんとかなる。観光地と言い難い場所を選んでいるのだから、これくらい覚悟しないとならないだろう。判断に困るのは廃屋然とした元々客商売をやっていたような佇まいの駐車できる場所で、停めても文句を言われないだろうけど私有地だ。こういう所に停めたいのは自分だけでなく、時間と機会を別にして皆が停めることで所有者が苛立つような成り行きにはしたくないし、漁港などは釣り人が無法にクルマを停めたことで関係者以外立ち入り禁止になったりしている。だから常識で判断して、「歩け」となる。特定の誰かを悪く言う意図はないと断った上で書くが、前述のように海辺の場合は良識のない釣り人がやりたい放題をして駐車禁止や立ち入り禁止になった場所がけっこう多く、自分よりあとに訪ねてくる人たちに不自由な思いをさせるような真似は慎まなくてならないだろう。

 

Fumihiro Kato.  © 2018 –

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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なる人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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