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以前、Windows用のステガノグラフィー(画像内暗号化埋め込み)ソフト「STEGANO」を紹介し、これを無料の仮想環境ソフトで運用する方法を示した。ステガノグラフィーは画像ファイル内に任意のデータを埋め込み、埋め込んだことは画像を開くだけではまったくわからないので、何者かが無断で画像を使用して著作権者であると主張されたなら、バスワードで暗号化され埋め込まれたデータを復元して示し主張を覆すことができる便利な技術だ。こうしてデータが埋め込まれた画像は、サイズや色調を変更されたりコピーされても、埋め込みに使用するソフトによって強度に差があったとしても、大抵は埋め込んだデータが破壊さずに残る。デコードする際はパスワードが必要になるため、せっかく埋め込んだデータを第三者によって消されることもない。ここまでやっても、あの手この手で他人が制作した画像を盗んで使い、真の著作権者であると名乗りでても無視する悪質な輩がいるけれど、念のためステガノグラフィーで処理しておけば転ばぬ先の杖になる。
まあ、実はあれとかこれとか(単純な手口なので皆が思いつくだろうけれど念のため具体的に書かないでおく)されて盗用された場合はお手上げである。でも、画像検索からパクられるなど起こりがちな問題に対して、盗用された画像が誰ものか証明するには有用と言える。パスワードを知っているのは権利者だけ、改変されてもしつこく残っている、と盗用者には痛いところだらけなのだ。
ただ、Macでステガノグラフィーの処理をするソフトウエアは、そもそも他のOS用も少ないとあってよりどりみどりではない。そこでWindows用の「STEGANO」を紹介したのだが、同じくフリーウエアでMac用の小さなソフトがある。「iSteg」だ。http://www.hanynet.com/isteg/
「iSteg」は「STEGANO」とまったく同じ理屈で画像にデータを埋め込むソフトなのだが、使用目的に違いがある。「STEGANO」は画像の盗用を防ぐ目的のソフトで、「iSteg」は文書の秘匿や通信の秘密を守るため画像ファイルに文章を埋め込み隠蔽するソフトだ。JPEG画像と思わせておいて、画像は見せかけで、実はテキストを隠すためのものである。なんだかワクワクする? 使いかたができそうでスパイごっこ用のおもちゃみたいだが、驚くほど隠蔽性が高いツールだ。
こうした目的の違いはあるけれど、やっていることはまったく同じ。ただ、写真やイラスト作品を発表する人に向けてつくられた「STEGANO」には画像をプレビューしてリサイズなどする機能がインターフェイスに採用されているのに対して、「iSteg」は1ウインドウだけのシンプルな構成になっている。
「iSteg」はシンプルなだけに軽量なソフトなのだが、シンプル故に使い方に戸惑うかもしれない。操作は以下のようになる。
まず、埋め込む著作権表示をつくる必要がある。どのようなソフトでⒸ関係のただし書きをつくってもよいが、拡張子[.txt]のプレーンテキスト以外は認識されないので書き出す(保存する)ときはプレーンテキストを指定する。著作権関係のただし書きにフォントの指定やレイアウトなどまった必要ないので困らないだろう。かなり長文であっても、何も問題なく埋め込むことができる。「STEGANO」の場合は、画像に画像、事前に作成済みのテキスト、ソフト上で作成するテキストなど、あらゆるものを埋め込める。(強度を高めるため)私は「STEGANO」で画像とテキストを埋め込んでいるけれど、テキストだけでも用は足りる。問題は埋め込みアルゴリズムの違いによる強度だ。これはなかなか比較しにくいところもあり確たることは言えないのだが、「iSteg」でテキストを埋め込んだ画像を1/10以下に縮小して保存しても、埋め込んだ原稿用紙数枚分のテキストをちゃんと読み出せた。
両ソフトの違いは、多様なファイルを複数埋め込み可能で、書き出し画像形式が複数ある「STEGANO」と、テキストファイルだけ埋め込み可能で書き出しはJPEGだけの「iSteg」といった点だけでなく、Macのネイティブアプリケーションである「iSteg」と、なんらかの方法を使いMac上でWindows環境を動かさなければならない「STEGANO」の違いがある。「STEGANO」は日本で開発された日本語用ソフトで、本当によくできているのだけれど動作に緩慢なところがある。その点、「iSteg」は英語版のみながらMacのネイティブソフトなので特に何も意識せずサクサク使える。どちらもステガノグラフィー(画像内暗号化埋め込み)を実現するのに変わりないので好きな方を用いればよいのではないか。
Fumihiro Kato. © 2018 –
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