スマホアプリのカーナビは便利なのかどうか

とても大雑把なくくり故、比較を書けば乱暴な話になるだろう。しかし一方で、専用品のカーナビはガラパゴス化していて将来性がないと記事化するメディアもあるので、どっちもどっちと思って読んでいただけるとありがたい。

私は撮影地点への移動をかなりの割り合いでホンダディーラーオプションのGathersに頼っている。世間的に高いと言われる価格設定であるのを知りながらGathersのナビを採用したのは、リアルタイムでクラウドサービスと連携してコースの最適化が図れるためだ。なお通信費はタダだ。以前はパイオニア製のナビを使用していて、スマホ以前の時代だったからとうぜんカーナビはこうした専用品しかなかった。ただこのナビは時代性ゆえに頭が悪いのと、後年いろいろ不具合が出てきてスマホのナビを併用していた時期があった。いろいろスマホのナビアプリを経験して、まだまだダメと判断したのでGathersにした次第だ。ちなみにGathers導入は2017年初頭だ。

スマホナビの面倒なところは、バッテリー持続時間と最適な取り付けステーを自分で選ばなくてはならないところにもある。特に前者は、ナビを動作させ続ける限り位置情報を取得し続け、ダウンロードされている地図の範囲を出るたび地図情報を取得する通信が必要で、思いの外に電力を消費するためシガーソケットなどから電力を供給するのがもっとも確実だ。あたりまえであるし、こうした配線またはUSBの結線がダッシュボードにちょろりと露出するのが気にならない人もいるだろう。ただ私はどうにかしたほうがいいなと感じた。オツムが弱い前述のカーナビでは一方通行を逆走する経路が示されたことが2回あり、これは地図更新の直前に現地の実態が変更された可能性もあるが嫌な経験だった。このような逆走を指示することはなかったが、スマホアプリは地元民のうち近所の人しか通行しないような極細道やどう考えても不合理な道順を示すことが一度や二度ではなかった。ではオツムが弱い前述のカーナビはどうだったかというと、青森県の山深いところへ行く際に未舗装部分を含む林道ちっくな難所に導かれ、宿について地元の人に聞けばそんなところを通るのがおかしいとのことで、車線は引かれているはガードレールはもちろんあるはの別ルートを教えてもらった。とはいえ、確率的にはスマホアプリより断然ましであった。

Gathersを採用してからスマホアプリを使わなくなったので、この1年ちょっとの間に各社のアプリが向上いちじるかったとしても現状がどのようなものか私は知らない。ただいろいろなところで聞く噂話では、Googleのアプリは依然として不可解なルートを案内するという。賢いGathersでも、他に選択の余地がない場合はこうした変なルートを示すが、噂に聞くGoogleのアプリの現状とは雲泥の差であると思われる。Gathersで「これはないだろう」と感じたのは、ロケ地で食事のできる店をナビ機能を使って検索し示された経路がご近所の人専用のような細道で、店に行ったら表通りまっすぐの駐車場入り口があったときだけだ。この道だって、確かに対向車がきたらバックしなければならないが驚くほど変な道ではなかった。こうした経験と、他の人の経験に基づく噂話で評価するなら、手放しにスマホアプリが優秀で専用ナビが時代遅れとは到底言えないのだった。

GathersはGathers搭載車の走行状態をどの道をどの方向に進んでいるかだけでなく、加速減速、急ブレーキなど含めてデータセンターに送信する。このとき個別の車両はハッシュ値に変換されているので個人情報を後から解析することは不可能だ。全国からデータセンターに送られたデータは通行不能な道路や渋滞の状況などリアルタイムで把握し、これを各車両にフィードバックする。また各地各箇所のVICS情報もデータセンターレベルで加味されて、最適なルートを逐次ドライバーに伝える。このため到着予想時刻が分単位で正確で、多少遠回りしても圧倒的に流れのよいルートが指示される。VICSの情報を車両ごとナビが受信する場合は数キロからせいぜい10キロの範囲の交通情報を参考にするだけだが、全国の全情報をデータセンターで処理するGathersナビは自動車が1日で移動できる範囲を軽くカバーして最適ルートを検索したり修正したりする。このためVICSを利用するだけでは首都高のまったく動かない大渋滞へ誘導されるケースがあるし、VICSを参照しないならとうぜんルートの修正はない。Googleのアプリは実際に走行している自動車の移動速度を参考にしているというが、明らかにルートの指示が劣っている。詳細はわからないが、ローカルな場所に分け入っていると前回訪ねたときより賢いルートが示される場合があり、Gathers搭載車が通行するたびデータセンターのサーバが賢くなっているのかもしれない。

VICSは日本固有の方式で、海外で相当するサービスは別方式だ。この点一つとってもGathersや他のナビはガラパゴス化していると言える。しかし同等のサービスを海外で実装するなら、その国ごとVICS同等のシステムと協調しなければならずやはり国ごと、圏内ごとガラパゴス化する。また、日本とEUとアメリカの道路事情はまったく違い、それぞれに合わせたルート選択や走行時の情報修正が必要になる。日本では行き先登録を間違っても、森林の中の小径に案内されることはほとんどない。つい最近報道されていたが、目的地登録を誤ったアメリカのトラックが森林内でスタックして、運転手が数日かかって飲まず食わずで高速道路のICに辿りついた話などアメリカ固有の問題だろう。こうした事情を一切お構いなしなのが、前述のGoogleのナビアプリだ。幹線道路を走るには十分かもしれないが、ローカルな場所に入るロケでは私は怖くて使う気になれない。

もともとナビに消極的だったアメリカでは、専用のナビの普及率が低く、現在はスマホやタブレットのナビアプリが主流だ。タクシーは皆、ナビアプリを使っている。なので、こうした普及具合だけ見ると専用のナビに将来性はないし、ガラパゴス化する一方であると言いたくなるかもしれない。専用品のナビとアプリの間に本質的な違いはまったくないので、今後ナビアプリはもっと賢くなって行くだろう。でも現状では、賢いタイプの専用ナビとの差はあまりに大きく、ナビを使うまでもないルートでは違いに気づかないかもしれないが、ナビが必須のルートでは到着までの時間と安全性に大きな違いが出る。本質が変わらないなら、専用ナビがアプリ化するのも難しくなく、これまでの資産を使って専用のサービスを利用する形態に変わる可能性だってある。スマホアプリのカーナビを否定する気はないし、簡単な用途では専用品のナビを自動車に組み込む必要はないかもしれないと思う。しかし「スマホアプリのカーナビは現時点で十分なもので、専用品のナビはガラパゴス化している」とする論調は、首都圏など都会で区をまたいで移動する用途くらいしかナビを使用したことのない人のものだろうと、ナビを使い込むほどに感じるのだった。もしくはペーパードライバーかもしれない。そして自動車メーカー系の専用ナビ、専業メーカーのナビは確実に自動運転を見据え開発されているのを感じる。

 

Fumihiro Kato.  © 2018 –

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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なり人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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