私はカメラのグリップを白っぽくしない

なにを話題にしようとしているかといえばカメラや機材の手入れだったり、扱いかただったりする。ただ私は、カメラを後生大事に磨くような趣味はもっていないし、一人でぶらっと海辺へ撮影に出かけるときはマンフロットのカメラバッグに数台のカメラを「ただそのまま」放り込むような雑な人間だ。しかし、カメラのグリップが白っぽく汚れているのはイケていないというか汚く感じる。実際のところ私のカメラはボタンの文字が一部ハゲていたりするし、用途やら設定違いを一目でわかるようにシュアーテープ(パーマセル)をペンタプリズム上部に貼ってAとか1とかダーマトで書き込んでいる。しかし、グリップは綺麗にしたい。

グリップのあの白いナニガシかは指由来の汚れや汗なのか、素材の変質なのか一概に言そうにないけれど、ゴム質の素材が手指と接触したり空気中にあることで加水分解しているのは確かだ。だって手指由来の汚れなら落とせるけれど、ただ清掃するだけではすぐに白っぽくなる。みなさんやっているかもしれないが、あれはシリコンスプレーを布やキッチンペーパーなどに少量吹いて優しくこすると元どおりになる。厳密には元どおりではないかもしれないが、見た目は買ったときの状態になる。これからカメラを売りに行こうとしていてグリップが「ムムム」な状態で困っている人は、ホームセンターに行って一本150円程度のシリコンスプレーを買ってくるとよいだろう。ただし間違っても直接噴霧してはならない。こんなことしたら滑って滑って大変だ。

世の中には重曹水を使えというアイデアがあるけれど、私はオススメしない。また世の中にはクレ556が使えそうかなと考えている人がいるみたいだが、あれは灯油だ。灯油そのものではないだろうが、そういったもので固着した金属パーツの動きを一時的によくする目的のスプレーで潤滑剤ですらない。古いマニュアルレンズを再生するのでなければ、カメラとクレ556は仇同士の関係である。シリコンスプレーは三脚やライトスタンドのメンテナンスにも使用できるから、無水アルコールのように常備しておきたいものだ。なおシリコンスプレーは、ストロー状の延長ノズルが添付されているものを買わなければならない。これがあるとないのでは作業性に大きな差が出る。

・無水アルコール(エタノール)
・シリコンスプレー
の次は、シリコングリスを揃えておきたい。

グリスは金属同士が接触し合う箇所の潤滑と密閉性の維持に使うもので、シリコンのほかリチウム、クレアなど様々な素材を使ったものが売られている。グリスは主に三脚のメンテナンスに使うが、カメラとレンズ以外の機材の動きが渋くなったり引っかかりが生じているときも使用し、原料による特性の違いはまったくと言ってよいほど関係ない。グリスは大容量で販売されるケースが多く、木工用ボンドのボトル程のサイズは使い切れず持て余す結果になる。オロナインのチューブくらいのものを使い切っては買ってのサイクルにするほうが賢い。チューブが蛇腹状になっているグリスは、通販サイトの写真の見た目以上に大きく、更に粘度が高いものが多いので避けたほうがよいだろう。高温、高圧といった過酷な動作環境なら別だろうが、いろいろ使った経験からシリコングリースでいいかなという気がしている。というのは、もっとも安全性が高いからだ。

グリースアップは分解作業とひと組の関係にある。パーツの動きが渋いとき工具がないからとか面倒という理由で、バラさないまま露出しているネジなどにベトっと塗ってもベタつくだけで本質的改善には至らない。

・無水アルコール(エタノール)
・シリコンスプレー
・シリコングリス
の次は工具だ。

カメラやレンズが不調なら、迷わずメーカーへ修理に回すべきだ。したがってレンズをバラすための工具は必需品ではない。ほとんどの人がプラス・マイナスのドライバーとラジオペンチを持っていると思われる。しかし、これらが活躍する機会は案外少ない。というか、100均で売っている類のこれらは部品を破壊するだけなので使うべきではない。工具は部品と同等に精度と効率が求められるものなので、ホームセンターに行って1500円以上のものを買わなくてはならない。間違ってもアマゾンで中華製の700円程度のものを買ってはならない。一回買ったら長期間使えるものなので、ナントカの銭失いは賢くない。ドライバー、各種サイズの六角レンチ、ラジオペンチではないペンチ、プラスチックハンマー、HUSKYの三脚をバラすなら更に軸用スナップリングプライヤー(爪の先のサイズ0.8mm程度)が必要になる。スナップリングプライヤーには軸用と穴用と両用があり、穴用ではHUSKYの雲台はバラせないので注意したい。プラスチックハンマーは釘を打つものではなく、打撃による衝撃で固着したパーツを緩めたり、パーツをはめ込んだりするためのものだ。

・無水アルコール(エタノール)
・シリコンスプレー
・シリコングリス
・ドライバー
・各種サイズの六角レンチ
・ラジオペンチではないペンチ
・プラスチックハンマー
・HUSKYの三脚をバラすなら更に軸用スナップリングプライヤー
これで一通りのメンテナンスができる。
スナップリングプライヤーで説明したように、パーツのサイズにぴったり適合する工具しか使ってはならない。もし適切なサイズではない工具を使うと、ネジの頭を舐めるなどして機材が使い物にならなくなる。

私のカメラの扱いは道具として大切にしているが、バッグには放り込むし、砂塵の中でもしょっちゅう使用する。レンズ保護フィルターは大嫌いなのだけど、砂塵や潮風の暴風のなかではべとっと塩分、水分、砂塵がレンズにまとわりついて撮影続行が厳しくなるし、こうした汚れを清掃するのがとても手間なので観念してフッ素コートのものを使うようになった。でもこれだけではどうにもならない問題があり、レンズの繰り出し部、フォーカスリングの隙間、フードのマウントなどに砂等が噛んだり付着する。こうなると注意深くブロアやダストスプレーを使い、ハケ箒も使い、仕上げに無水アルコールを使って拭う清掃をするほかない。環境劣悪な場所で撮影する際に、私は予防的にOP/TECH レインスリーブを使用する。2枚入り900円前後の使い捨てレインカバーだ。

カメラ用雨よけグッズは結構な値段のものから中華製の安価なものまである。使い勝手を決めるのはファインダーと背面液晶をいかに視認させる構造になっているかだ。ただこうした違いはあっても、フィルム装填などに使われていたダークバッグにレンズ用の開口をつけたようなものか、筒状のビニール袋かの違いしかない。OP/TECH レインスリーブは後者で、使い捨て前提なだけに必要最小限の使いやすさ向上構造しか付随していないが、ファインダーは覗きやすいし惜しげなく使い倒せる。使い捨てとはいえ、数回は十分使用可能だ。豪雨では使い物にならないかもしれないけれど、どうせイラっとするものなのだからOP/TECH レインスリーブで十分だろうと感じる。

こうした状況ではレンズ交換が苦になる。センサーの埃は現像時に除去できるけれど、作業中にダストの影を見るたびげんなりして精神衛生上よろしくない。なので私は、エツミのデジタルチェンジバッグを使っている。これもまたダークバッグにのぞき窓をつけただけだが圧倒的に信頼できる製品だ。デジタルチェンジバッグを使うまで、車に乗り込みドア等閉めた上でエアコンの送風も止めてレンズを交換していたが効果は期待薄だった。

話は前後するけれど、フッ素コートの防汚フィルターについてだ。防汚なしのフィルターと比較して価格が高く大口径レンズ用は負担が大きい。フッ素そのものは強固なのだが、ガラスとの結合が強固かちょっとわからない。フッ素とケイ素の結合はかなり強固なものだが、レンズのフッ素コートの場合直接フッ素がガラスに結合するイメージなのか、フッ素とガラスの間に炭素の土台があるものかわからないのだ。フッ素とケイ素が結合して無機フッ素になっているとしたら、強固な結合ではあるけれど水分を含む空気中にあると強烈な酸化作用のある気体を発生させ不安定になりそうな気がするけれど気のせい? 。 フッ素コーティングには層を貫通する微細な穴がランダムに存在し、この穴を通り抜けられる微細な物質がフッ素とガラスの結合を脅かしコーティングの層を剥離させる。そこで穴がランダムに並んでいるのを利用して、貫通孔がなくなるようにフッ素コーティングは数層重ねられる。ただしこうして層をつくっても貫通する穴を皆無にはできず、フッ素コーティングそのものは侵されないが層ごとペロリとなる恐れがある。分厚いコーティングの層をつくれば貫通孔は限りなく少なくなるとしても、光学性能を落としては意味がないのでバランスを取らなくてはならない。撥水・防汚効果によって清掃時に無理な力が加わらないだろうから、フライパンのテフロン加工のように一、二年でダメになるものではないだろうが、いつかはダメになって当然と覚悟はしておいたほうがよいだろう。世の中には低反射率や透過特性、ガラスの歪みなどで高付加価値をつけたフッ素コートフィルターがあるけれど、私の使用実感からするとどれもゴーストが出るときは出るし、なんでもないときは騒ぐほど画質に重大な影響を与えるものではなかった。もちろん、良質なものは良質であるとしても差の大きさは各人が評価するほかない。

こうした理由から、私は次のようにしている。
1.使わなくて済むなら使わない。
2.使う場合は劣悪な環境なので、どうしたってレンズの性能を極限まで引き出せない。
3.だったら無理して高価な部類を買うのではなく基本性能が約束された比較的安価なフィルターを使用する。
4.今のところ手持ちフィルターは耐用年数に届いていないが、なんらかの不具合が生じたら惜しげなく買い換えることにする。

基本の考え方はゼラチンフィターを色温度変換に使っていた頃の態度と変わらない。素材がプラ系のフィルターは常時使うものではないし、いずれは使い物にならなくなるものだ。これまで別メーカーを用意していたけれど、新たにHAKUBAのXC-PROを用意するようになった。ニコン純正には素晴らしいものがあったり他社にも高付加価値高価格ラインがあって、HAKUBAのXC-PROは見劣りするかもしれないけれど半額近い差は割り切った使用目的に合っているし、だからといってとやかく言うような不具合はまったくない。で、HAKUBAが光学ガラス製品の加工工場を持っているとは思えず、またこうした分野の製品を独自開発しているとも思えないので、多少の仕様違いでXC-PROは他の有名ブランドのOEMだろうと考えるわけです。

 

 

Fumihiro Kato.  © 2018 –

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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なり人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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