バッテリー式ストロボどれがどうなのか私的整理

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バッテリー駆動かつ70〜80Ws以上のストロボについて、実際に使用したもの、試用したことがあるもの、カタログ値のみわかっているものを、それぞれ条件は完全一致しないが(あくまで私的な感想として)整理したいと思う。

カタログ値 製品名 / 出力 / モデリングライト / 重量
・GODOX V860II / 70〜80Ws / なし / 540g
・GODOX AD200 / 200Ws / (出力不詳)LED / 560g
・GODOX AD360II / 360Ws / なし / 800g
・GODOX AD600 / 600Ws / 10W LED / 2.66kg
・Prophoto A1/ 76Ws / (出力不詳)LED / 560g
・B1X 500Ws / 24W LED / 3kg
・Prophoto B2 / 250Ws / 9W LED / 1.6kg

パワー to ウエイトレシオ(単位重量あたりの出力 / 数字が大きいほど優秀)
・GODOX V860II  0.13〜0.15 Ws/g
・GODOX AD200  0.36 Ws/g
・GODOX AD360II  0.45 Ws/g
・GODOX AD600  0.23 Ws/g
・Prophoto A1 | 0.14 Ws/g
・Prophoto B1X  0.13 Ws/g
・Prophoto B2  0.16 Ws/g

バッテリーと本体の関係
一体型
・GODOX V860II
・GODOX AD200
・Prophoto A1
・Prophoto B1X

別体型
・GODOX AD360II
・Prophoto B2

一体、別体ともに可能
・GODOX AD600

分類

標準装備にフレネルレンズが含まれる
GODOX V860II
GODOX AD200
Prophoto A1

高効率リフレクターが別売りパーツにある
Prophoto B1X
Prophoto B2

メーカーオプションにはない
GODOX AD360II
GODOX AD600

マウント
メーカー独自マウント
・GODOX AD360II
・Prophoto A1
・Prophoto B1X
・Prophoto B2

ボーエンズマウント
・GODOX AD600(独自マウント機もある)

マウントなし
GODOX V860II
GODOX AD200

ホットシュー対応
あり
・GODOX V860II
・GODOX AD360II
・Prophoto A1

なし
・GODOX AD200
・GODOX AD600
・Prophoto B1X
・Prophoto B2

対象にした機種数が少ないので、類似する他の機種については掲載機種を参考にしてもらいたい。

概観

カタログ値はストロボ本体のみの重量であるため、実際にはバッテリーの重量等が加算される。バッテリーは本体と一体化するものと、コードで結線する別体型がある。一体型はシューにマウントしたりライトスタンドを使うとき、カメラやライトスタンドの重心位置が高くなり負荷がかかる。雲台を使うときは、重量があるものはコントロールに神経を使う。別体型は結線が煩雑になりがちだが、ストロボ設置や手持ちの自由度が上がる。ただし、本体そのものが軽量であるならバッテリーの重量はあまり重要でなくなる。

何れにしても、バッテリー駆動ストロボは可搬性が求められるうえ、現場での使い勝手を考えると軽量であることが期待されるためパワー to ウエイトレシオは重要だ。また出力が足りない場合は複数台使用しなければならず、この点も考慮しなくてはならない。

私の体験から多少重量が増えても出力が大きめのストロボのほうが、バッテリー式ストロボでも圧倒的に使い勝手がよいと感じる。70〜80Wsの(いわゆるクリップオンストロボ)1台で賄える撮影はかなり限られ、2台に増やしたとき出力は2倍になるがGNは1.4倍である点は注意したいところだ。

200Ws台の出力は帯に短し襷に長しの感がある。リフレクターの構造によっては効率的に光を照射できるとしても、直射、ディフューザー使用いずれであっても300Ws台が欲しくなる。こうして考えると、GODOX AD200とProphoto B2はやや物足りない。両機のパワー to ウエイトレシオを比較すると、GODOX AD200はProphoto B2の2倍ほど重量あたりの出力が高い。ただし、Prophoto B2はバッテリー別体式だ。GODOX AD200には2台を1台として使用するオプション製品があるので、400Wsとして使用するのが現実的ではないだろうか。

ロケーション現場でストロボの発光部を被写体にかなり接近させて使うのでなければ、出力が小さなストロボはフレネルレンズの有無が重要な意味を持つ。70〜80Wsのストロボにフレネルレンズ付きの場合、300Wsのストロボにリフレクター装備の場合にほぼ等しい光の到達性が得られる。逆に70〜80Wsのストロボにディフューザーを使うと、さらに光の到達性が悪くなる。小出力のストロボ1台にディフューザーを使うとき、撮影の目的や絞り値によって違いはあるものの、光源と被写体の距離は1〜1.5m以内くらいが実用的な範囲ではないか。

モデリングライトは10W以下なら存在する意味はほどんどなく、例示したストロボのうち出力を明らかにしていないものはこれに該当する。また屋外や明るい場所で使用されがちなバッテリー式ストロボは、環境光の影響を受けるためモデリングライトが有効に働かない。また、モデリングライトに使われるLEDが熱によるダメージを受けやすい点を考えなくてはならない。大型ストロボの発光部に使われる管球は交換できるが、内蔵LEDは容易に交換できず修理扱いになる。チューブの発熱だけでなく、LEDの出力が大きくなるほどにLEDからの発熱がかなり大きくなるためヒートシンクや放熱方法が重要になる。

光の質は、均一性、拡散性、色温度の安定性のいずれを最重要課題にするか撮影者によって変わる。リフレクターを使うタイプは色温度の安定性以外は概ね大差ないが、シューマウントを基本にする小型とAD200はフレネルレンズの質が均一性と拡散性を決定する要になる。V860IIとAD200は一般的なクリップオンストロボ品質で、Prophoto A1が例外的に高品質なフレネルレンズが使える。フレネルレンズの品質だけでなく、チューブが収まる筐体の形状やサイズの影響もある。Prophoto A1は余裕のあるサイズのケースにチューブが収められフレネルレンズは円形だ。対して、AD200のチューブが収まるケースは小さな箱型で角形のフレネルレンズだ。この差はあまりに大きい。

感想

どのストロボが優れているか、判断は人それぞれだ。しかしGODOX AD360IIの前バージョンAD360が発売されたときの衝撃が、AD360IIのパワー to ウエイトレシオの優秀さからも理解される。AD600やB1Xのように出力がかなり大きなストロボは別として、AD200が発売されてもAD360IIのメリットは減じていない。今年CactusがAD200に似た構成のCactus RQ250を発表した。中途半端だったAD200の、中途半端な部分を切り捨たうえで、可能な限り光の質を向上させた機種のようにみえる。だが個人的には250Wの出力は物足りなく感じる。とはいえ、AD200にもRQ250にも人それぞれのメリットがあるはずですべてを否定するつもりはない。

AD600やB1X、さらにProphoto B2を加えたモノブロック型と同じ形状のバッテリー式ストロボでは、圧倒的にAD600にメリットがある。価格、パワー to ウエイトレシオ、出力が優っているので、光そのものやブランド性、販売・アフターケアについてProphotoでなければならない人以外はAD600一択なのではないか。ふと思うのは、こうしたモノブロック型のスタイルは必要あるのだろうかという点だ。AD600は本体をジェネのように別体にする発光部があり、本体とバッテリー一式を携帯するためのキャリングバッグもまたある。だがモノブロック型にすることで2.66kg(バッテリー別)になるのだとしたら、重量、体積ともに撮影者にとってメリットはない。バッテリーの重量が加わるため、電源タイプのモノブロックより重いのだ。3kgを越す本体を腰に提げたり持ち運ぶのは重労働だ。救いは別体の発光部があることで、こうした機能がないB1Xは少々厄介である。 B2が発光部とバッテリー別体型のまま500Wを超える出力になるなら(ようするにAD360IIのスタイルと多少の重量増のまま500W越えになるなら)、とてつもないヒット商品になるのではないだろうか。

モノブロックストロボはジェネを内蔵した結果、この形状になっている。重たくがさばるジェネを必要な灯数分に分割したほうが楽だから、こうなっている。発光部そのものはジェネを使うもののように発光機能のみに特化したほうが、軽量コンパクトで圧倒的によい。それぞれのデメリットを引き継ぐ必要はまったくない。

FP発光の内容について比較をしなかったが、どれもほとんど似たような内容だ。FP発光は通常の発光より出力が下がり、発熱が増える。安全装置によって発光回数が制限されるし、発熱量を劇的に抑えたければ放電管式をやめる他ないので深く突っ込まないが、課題は出力の低下だ。出力が1/4〜1/3くらいになるので、かなり条件が揃っていないと日中シンクロに使えない。近距離からの直射ならまだしも、ソフトボックスのような拡散装置を使うならなおさらだ。こうなると発熱量は増えるが出力が大きなストロボが有利になる。こうした点からも、クリップオンタイプのストロボと、バッテリー式の出力が大きな他のストロボとの間に差が生じる。

今回は70〜80Wsのクリップオンタイプのストロボを含めて比較したが、やはりこのクラスと200Ws越えのストロボはまったくの別物だろう。これは実際に使ううえでProphoto A1も変わるところがない。したがって70〜80Wsのクリップオンタイプを所有したうえで、別に200Ws越えのバッテリー式ストロボを使うことになる。70〜80Wsのクリップオンタイプを4台くらい持ち運んで一組にして使うのと、200Ws越えのバッテリー式ストロボを1台使うのでは後者のほうが圧倒的に楽で便利だ。前者ならせいぜい2台でこなせる場面までが実用的なのではないか。 A1以外はクリップオン4台で、200〜300Wsのストロボ1台を買える価格だ。

自由度を取れば、電灯線を電源にするストロボよりバッテリー式になる。出力は大きければ大きいほどよいが、使用目的を考慮すると500〜600Wsもあれば事足りる。TTL調光は必ずしも必要ないがFP発光が搭載されて当たりまえの時代だろう。かなりバリエーションが出揃った感があるので、Cactus RQ250が発売されたあとしばらくは改良型がでるくらいの状況が続くかもしれない。バリエーションがあれこれ登場した現在はカンブリア紀に生物の形態が爆発的に増えた状況に似ているが、バッテリー技術のブレークスルーを迎える前に形状が淘汰されるか、使用者によってはっきり取捨選択されるに違いない。なぜなら、既にミニカムやコメットのPT1200はニッケル水素バッテリーながら1000から1200Wsの出力を可能にしている。そして、これらの形状はGODOX AD360IIやProphoto B2と同種なのだ。

Fumihiro Kato.  © 2018 –

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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なる人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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