体力に関して心が折れそうになりながら進む

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写真は1にセンス、次も1に体力で2はないのだった。機材は重く、しかも精密機械であるし、現地に自ら赴かなくてはならない。いまどきはカメラの軽量化、コンパクト化が進んでいるけれど、高画素化にともないレンズは重厚長大になっている。その他の機材もまた小型化が著しいのだが、いろいろやりたいことが重なれば引っ越し荷物のようになる。段ボール箱に入れて蹴っ飛ばしてよいなら別だが、これらのほとんどが精密機械なのだから大切にお運びしなければならない。したがって重量や体積をものともしない体力がある人ほど写真撮影の可能性が広大に開けていると言える。体力はあるわ、老眼ではないわの若い年代にやりたいことは一通り撮影しておくべきなのだ。

やっとこさ予定がなんとかなりそうな状況になってロケの準備をはじめたのだが、求めるものに機材を合わせる工夫や、定番のカメラ、レンズといったものをあれこれしつつ「あー、重い」と心が折れそうになった。どうしたら500g、200g、100g減量できるだろうか必死に考えざるを得ない。単独行の屋外撮影は、ほんと体力次第だ。世の中の趨勢を鑑み最低時給との兼ね合いから、アシスタントに1時間1000円、いやいや単純作業ではないから銀座のフロアレディーくらいとは言わないもののもっと払わなければならない。で、拘束時間8時間くらい。お金で解決できるなら、そうしたほうが絶対お得なのであるが、あっちふらふらこっちふらふら気ままに感情が赴くままの撮影をするとなれば、アシスタントがいくら出来た人でも何かと気にかかる。気にかかると表現するのは失礼千万ではあるが、自分ではない誰かに協力を仰ぐなら、心の中で思っている内容は別であるとしなければならず、どうしたって「そうじゃない。こうだ」と厳しく言いたくなる。そんなこんなを納得していただける人はいないだろうし、こういった「違う! こうしろ!」なやりとりはしたくない。つまり贅沢なのであって、自分の体力と気力で解決しなければならないのだった。

何が重いのか? だ。ストロボ3台が重い。ストロボ3台を設置するための諸々が重い。風景だろうと何だろうと、そのままで満足できるなら敢えて人工光源を使わないが、使ったほうが目的に叶うなら躊躇いなく使う方針なので、これまで光源の出力について不満があった。昨年の福島行はストロボを2台に増やして何となく手応えがあった。しかし、まだまだ。なので、総計500Wにしてみた。馬鹿馬鹿しい話に聞こえるかもしれないし、本人としても手応えがある訳ではないが、実験ではそれなりの効果があったので出先に持ち込むことにした。実験と実際は違うので、使い勝手含めて馬鹿らしかったら今回限りの構成だ。

ストロボはV860IIを2台とAD360II。ブラケットを使い3台を横並びにしてライトスタンドに設置。アンブレラに向けるならクリップオンストロボは放射状に配置すべきだろうが、横並びにするのは照射角を把握しやすくするためだ。で、福島行で1台は他と照射方向をやや変えたい場合があったので、首振りに加えて撮影地で色々操作できるように極小雲台をかませた。この極小雲台は、30年くらい前にメキシコを撮影する際に買ったテーブルトップ三脚のもので、カメラ用としては小さくて使い物にならないがスリーウエイではある。雲台はいくつか持っているのだが重量増を抑えストロボにぴったりなのはベルボン製のおもちゃのようなコレだけ。ここにコールドシューを取り付けてストロボを差し込むのにはうってつけだった。コールドシューは他に2個の計3個だが、いろいろ試した結果ストロボのおまけについてくるスタンド式のアレがもっともよかった。

図の右端はストロボ側の接点が増えた結果、シューの切り欠きとの位置関係が合わず押し込めば入るのかもしれないが、無理をしてよいことなしで昨年の段階で却下済み。3連のアンブレラ用コールドシューは誰もが一個くらい持っていそうなもので私も持っていた。で、後の二つもごろごろ転がっていがちなものだ。

いろいろ言いたい所はあるが、3連のコールドシューはストロボの取り付けよりも取り外しの際にシューの位置によって荷重がかかる方向が異なり、小さなつまみの扱いにくさもあってストロボが「おっとっと」となりがち。屋外しかも一人で撮影することを考えると、室内での使用では考えられないミスをするものだから、今回は却下となった。このシューと同じ構造の単品もまた、つまみの小ささによる扱いにくさは変わらない。おまけのスタンドを試して見たら、突起が邪魔な点を除いて意外なくらい扱いやすかった。具体的には、さっとストロボを挿して、さっと抜き取るのが他と比べようがないくらい楽でミスをしそうにない。(取り外しやバラシのときミスが発生して痛い目を見る、というのは私だけの小さなトラウマかもしれないが)

どこが違うのかというと、コールドシューそのものの手前に助走区間がありストロボを抜き挿しするガイドになっている。屋外でささっと作業するとき、このわずかな差が便利このうえない。しかも、ストロボを装着したときの奥行き側が閉じていてストッパーになる。小さくつくる必要がないので底面積が確保され、ブラケットとの圧着性がよい。いまさらこの構造を生かしたコールドシューを金型をつくって販売したところで、あっという間に中華メーカーにコピーされるだろうからやらないけど、こんな製品がお安くあったら予備を含めて10個くらい買うだろう。これは安い値段で売られてもいるから、余計な突起は切り落としてもよいかもしれない。

皆が持っていて1個2個3個となくしつつ、それでも必要で時々買い足すもの。おまけについてきて、使わないけど捨てるのもなんだなあというもの。遠い昔に買ったあれやこれ。いつどこで使い所がくるかわからないものだ。今回の私的ヒットはおまけのスタンドもそうだが、実は地味にベルボンの使い物にならない雲台だったりした。元のテーブルトップ三脚は、三脚として買ったのではなく雲台を外して一脚に取り付けて「三脚ではなく一脚だけど、一脚より安定感のあるもの」にするために手に入れた。カテドラルの中、敬虔な信者や聖職者がいる場合など三脚を立てるのが憚られる際の手立てだ。現在はこういった一脚があるみたいだが、当時はなかったので窮余の策だった。なにを言いたいかというと、「捨てなくてよかった」。

で、カメラと周辺機器にもこれが言えそうなのだった。カメラ本体やレンズは時代とともに中古品の入手が難しくなるとはいえ買い直しやすい。しかし、ベローズや機種固有の規格のアレコレはほとんど無理だったりする。レンズもカメラ本体より手に入れにくくなる。こうしたものはなくてもどうにかなりがちであるが、今回のベルボンの使えない雲台は、同等のものを今更買うのでは抵抗がある。先見の明がある人はカメラやレンズなどがディスコンになるとき先んじてこうした付属品的なものを買っているのかもしれない。「あー使わない使わない。誰がこんなの使うのか」といったものが手に入らなくなってから、「どうして買わなかったのだ」となる。ま、無理して買うこともないが、手放すときは慎重にということか。

だいぶ話が脱線したけれど、私の場合はライカL、Mマウントのレンズと引き伸ばしレンズが手放してから後悔したブツだ。いずれ近いうちにこんな話でも日記に書こうかと思う。

 

Fumihiro Kato.  © 2018 –

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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なる人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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