24-70mmは広角ズームだろという話

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かつてキヤノンFDマウント24-35mm F3.5 Lを便利に使用していた思い出から、現在標準ズームの主流というか中核にある24-70mmズームの70mmはおまけだよなと感じる。24-50mmズームにおまけの70mmが付随している、といった具合だ。こうして考えると大昔の24-35mm F3.5 Lとは比べようもなく優秀な写りで、しかもF2.8の口径比だなんてすごいものだとも感じる。ライカ判24mmから35mmはそれぞれ使い所が多い広角域であり、35mmから24mmに引いたとき遠近感の描写ががらっと変わるので重宝していたわけで、ここに50mmが加われば過去の私のライカ判での荷物はぐっと簡略化できたはずだ。24-35mmを装着したF-1と50mmを装着した同機の二台をわざわざ携行していたのだし。

24-70mmズームは冒頭で書いたように標準ズームの主流にされているけれど、これは主に人物をからめた取材が必須な職業写真家にとって欠かせないもので、かなり目的が限定されるのではないかと思う。室内、室外ともに人物撮影の比率が高い場合24-70mmズームは便利なのだが、ことを取材に限っても便利さが万能かと言われれば「?」である。旅ものの取材で機材を簡潔にしたいがためズームを大いに活用しようと24-70mmを基軸に据えたとき、これでは望遠側が物足りなく感じるかもしれない。もちろん70-200mmのような望遠ズームを加えれば済むのだが、カメラにくっついているレンズを交換しないまま撮影しようとするとき100mmあたりまでズーム域が欲しくなる。撮影対象が拡がると、途端に不満がふつふつ湧いてくる確率が高い。

どうしてか? 答えは簡単で私が散々ここに書いてきたスタンダード・ラインナップと呼ぶレンズ選択の法則で説明したように、28mm、50mm、100mmが被写体とのワーキングディスタンスのうえでも、遠近感描写のうえでも変化の違いが如実な焦点距離だからで、70mmは100mmの代わりにならないのだ。単焦点で考えるなら、50mmと85mmは代替できたとしても、50mmと100mmは別世界で代替できない。まして50mmと70mmは、ワーキングディスタンスの取り方やトリミングの如何でどうともなる焦点距離の差だ。撮影対象となる相手と場所が想定でき、しかも被写体が撮影前提の心持ちでいる取材には24-70mmは便利だし、暗所においてF2.8の口径比はフォーカスが楽だ。しかし、対象が広範な旅ものではカメラに装着したズームレンズの望遠端は100mmあたりまで欲しくなって当然なのだ。

このようなことから、24-70mmは広角ズームと位置付けた方がよいのではないかと思うのだ。24mmと28mm、24mmと35mm、28mmと35mm、これらは異なる特徴を持った焦点距離の差だ。24-35mmズームに50mmがもれなくついてくる言うことなしの広角ズームと認識すれば、24-70mmの帯に短し襷に長し感というか隔靴掻痒感はだいぶ軽減する。また他のレンズを携行する際も、24-70mmを広角ズームに位置付けると何かとすっきりする。考え方次第の問題だけどね。

24-70mmを広角ズームと認識しておくと、撮影していて70mm以降の望遠に必要性を感じたとき(自分が切るか、デザイン等のスタッフが切るか問わず)「トリミングで処理しよう」とはっきり割り切ったり、「いやいや多少手間だがレンズを交換しよう」と判断しやすくなるメリットがある。写真をある程度撮影している人なら「多少手間だがレンズを交換しよう」と思うときは、さらに長い焦点距離のレンズを使ってワーキングディスタンスを前後したほうが結果がよかったりするものだ。また、24-70mmのズームレンズを広角側担当にしておけば、「広角側は単焦点の◯◯mmを携行したりカメラに装着したままにするから、他に70-200mmがあれば十分。24-70mmは必要ない」などといった整理もしやすくなる。なまじ標準ズームだと思うから、20mm以下、24-70mm、70-200mmなどと広角・標準・望遠を取り揃えたくなる。

現在、24-35mmではズームレンジがあまりに狭い。24-70mmのズーム域はほとんど広角のためにあるのは確かでも、70mmだって活躍する場はある。50mmと70mmは代替できると言っても、70mmは50mm前後にはない遠近感の落ち着きがある。だから24-35mmズームを復活させろなんて言うつもりは毛頭ない。しかし、かつて私が24-35mmズームと50mmだけで様々なものを撮影できたのだし、さらにデジタル高画素化でトリミングの余裕が大きくなった点も踏まえ、24-70mmの位置付けを一考しても無駄ではなかろう。こうして思うのは、24-70mmではなく24-120mmを購入したほうが幸せになる人が多いのではということだ。「大三元」とか戯言を言っていないで実を取るほうがよいに決まってる。いずれにしても、名称やカテゴリーを真に受けずに自分にとっての位置付けを考えるべきだ。

Fumihiro Kato.  © 2017 –

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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なる人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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