撮影姿勢をイメージトレーニングする

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手ブレする、水平垂直をなるべく正確に出したいのに傾く、といったとき「脇がしまっていないからだ」とされがちだ。しかし、昔から言われる「脇をしめる」「脇をしめろ」とする助言は大いに間違っている。脇をしめろと言われて思いつく動作は、脇に近い部分の上腕と体側を密着させるものだが、この小さなエリアに力を入れると体そのものが硬直し、ここまでしても腕がおかしな動きをする。したがって手ブレはなかなか解消しないし、リキみによって体が歪むため水平垂直がずれるのだ。

人間はリキまなくても直立できる。しかも、腹筋、背筋に力を入れなくてもぐらぐら体が揺れずちゃんと静止できる。実際に直立して、腹筋と背筋に力をこめたときと、力を抜いたときの比較をしてもらいたい。力をいれれば肩がこわばり、力を入れなくてはと考えるから意識まで硬直する。力を抜いても静止できるなら、こちらのほうがよいのが理解できるだろう。

ではまず、撮影姿勢を適切化するためのイメージトレーニングを紹介する。

手のひらを開き、体の力を抜いて直立する。力を抜けば、頭は天、足は地にむかって垂直になる。体が傾くのは、どこかに力が入っているからに他ならない。

この姿勢のまま体の前で両手(手首あたり)を軽く交差させる。このとき上腕部と体側は、どこにも力を入れていないにも関わらず密着しているはずだ。手を交差させたままカメラを構える位置までゆっくり上げる。ますます上腕と体側は密着度を増す。カメラを構える位置まで手が上がったら、交差を解く。これだけでよいのだ。「脇をしめろ」と言われ、本来は力が入らない上腕の上部をリキませていたとき以上に安定した姿勢になっているだろう。これをカメラなしで行い、行って体感したものをイメージトレーニングとして思い起こせばよいだけだ。

次にシャッターを切る際のイメージトレーニングを紹介する。

いかに手と指先に力を入れず、しかも体を動かさず静止姿勢でシャッターを切るか、だ。力を抜いて直立したら、静かに大きく息を吸う。このときの筋肉の緊張(力の入り方)と、上半身の動きを記憶する。吸った息を大きく静かに吐く。先ほどと同様に筋肉の様子を記憶する。吸うときは、上半身と首が後ろ側へ広がって行ったはずだ。吐くときは、筋肉は弛緩し、体は前へ縮んで行ったはずだ。呼吸を吐くとき、あるいは吐きった瞬間がシャッターを切るべき瞬間だ。そして撮影時に呼吸は一定に保ち、シャッターチャンスを待つ。呼吸を一定に保つのは体から余計な動きを消すためであり、気持ちを平常心に保つためだ。息を吸うとき筋肉は緊張方向に働き、これはリキみに繋がり体のどこかが動くことを意味する。息を吐くとき筋肉は弛緩方向に働き、これはリキみが解消されると同時に、余計な動きがなくなることを意味する。ここまでの動作をカメラなしで行い、行って体感したものをイメージトレーニングする。

なお「白い死神」とソ連軍を恐怖のどんぞこに陥れたフィンランドの軍人でスナイパーのシモ・ヘイヘも引き金を引くときは呼吸を吐きながらであった。

「脇をしめろ」は有害でしかない。脇をしめろではなく、上腕を体側に密着させろだ。だが「密着させろ」と言われれば力を入れて固定したくなる。これがいけない。力をこめなくても、上腕部は体側に密着させられる。力をこめなくても、人間は静止できる。そして呼吸を静かに保ち、息を吐くとき筋肉から余計な運動が消えリキみがとれるように肉体はできているのだ。むしろ力を込めてカメラを構えたり、呼吸をぐっと堪えると筋肉はぶるぶる震える。

さて、どうだっただろうか。お試しあれ。

Fumihiro Kato.  © 2017 –

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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なる人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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