「Standard line up」を超えるために

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いやーリンクしていただいたけれど某所からのものは拒絶しているので記事を見られなかった方もいるだろう。勘弁してもらいたい。と、いうことで関係記事を書こうと思う(けれどやっぱり某所からはダメなんだな)。

(以下、ライカ判における焦点距離と画角で書き進める)

散々言及してきた無駄のない効率を求めたレンズの焦点距離の揃え方である「Standard line up」だが、基本さえ理解していれば拡張や改変が可能だ。基本とは、水平画角と垂直画角だ。各カメラメーカーのレンズは(新しいマウントゆえラインナップが限定される場合を除いて)だいたい規則的な揃いかたをしている。規則性とは、焦点距離が隣り合うレンズはほとんどの場合、水平画角が垂直画角または水平画角が対角画角にといった具合の関係性がある。説明だけではわかりにくいと思うので広角レンズの画角相関として過去に例示した図を掲載する。

この相関を標準レンズを中心に展開したものが「Standard line up」の考え方であり、ほとんどの撮影はこの辺りのレンズでどうにかなる。ほとんどであっても、すべてではない。したがって基準とする焦点距離を標準レンズから他に変えなくてはならない場合も多い。標準レンズを中心に据えつつ焦点距離を大胆に長く短く展開しなければ撮影意図を反映できないケースもある。私も45mmを中心に広角側を15mm、望遠側を70-200mmにしたセットで特定の作品づくりをしている。70-200mmに期待するのは135mmから200mmの焦点距離だ。

厳密に言えば、垂直画角が水平画角に、あるいは対角画角にとすっきり焦点距離ごと並んでいるわけではないが、大まかに縦横縦横くらいに考えても差し障りはない。もし厳密に画角を知りたいならメーカーの製品カタログの類のデータで調べてもらいたい。

人間の欲望は際限がない。また、これで撮影時に事足りだろうかという不安も打ち消しづらい。そこで「Standard line up」の考えを当てはめて必要な機材を整理したり割り切るのだ。35mm、50mm、100mmのレンズを所有していて魅力的な85mmが発売されたとする。物欲が亢進すると作例を見ただけで、自分にとって不可欠なレンズで、これがなければ新しい世界が切り開けないように感じる。だがこれまで100mmで過不足なくやってきたなら、85mmは100mmと使い所がぶつかるだけでなく50mmとも衝突する可能性が高い。なぜなら、は既に説明した。もちろんお金に余裕があるなら買ってほっとするのも悪くないが、必須かとなれば「?」だろう。いやいや大いに買って景気を盛り上げるべきだが、どうせ買うなら別種のレンズのほうが撮影範囲が広がるというものだ。

具体的に考えてみようと思う。ロケハンしていない未知の場所へ撮影に行くとする。自動車で移動するとしても撮影地までは徒歩になり、引越し荷物のようにすべての手持ちレンズは携行できない。こういった場合は標準レンズを基準にする「Standard line up」か、基準を広角側、望遠側にシフトしたラインナップを想定する。もちろん焦点距離の並びを、広角あるいは望遠側で極端なものに置き換え可能だ。ただし、どれだけ極端にするかは得られるメリットとともに失うものがあるのを考慮する。たとえば広角20mmは(ケースバスケースとしても)24mmあるいは18mmとして振る舞える可能性はあるが、28mmのように使用するには難しい部分がある。このとき28mmの画角を無視できるなら20mmのみを選択しても現場で失望しにくい。28mmの代わりにならない理由は、焦点距離がかなり離れる点だけでなく、広角特有の人間の視界とまるで違う広さ感があるからだ。20mmで縦構図にしたとき横方向に28mm横構図相当の画角になるのだが、天地が人間の視覚をはるかに超えて入り込み、天地を大いにトリミングしない限り比較的静かな28mmの世界とまったく異なるものが写り込む。こうした画角の見当ともに、個人的に好みのワーキングディスタンスであるとかパース感を考慮すればよいだろう。

望遠側への拡張は、超望遠の領域に踏み込む。となったとき広角側の選択とまた異なる事情が出てくる。200mmと300mmはまだ融通が効くが、400mm以上は人間の視界をはるかに超え別世界になる。別世界ではあるのだが、野鳥撮影や動物撮影またはスポーツ撮影でなければ、400mmを超えたら写真鑑賞者はだいたいにおいて焦点距離の違いを把握しにくくなる。だから、(人それぞれ違いはあるとしても)焦点距離に極端な差をつけなければ二本の超望遠を共に持ち出す意義は減る。

ではズームの末端焦点距離とズーム比を考えよう。超広角ズームというものがある。16mmあるいは18mmから35mmくらいまでズーム可能なものだ。広さは、ワーキングディスタンスで吸収できるものであるし、パース感は数ミリ刻みで微調整するものではない。となると、16mmあるいは18mmから35mmくらいまでを擁するズームの必然性が問われる。もちろん必要な場面があるから全否定しない(私も所有している)が、単焦点1本で十分かもしれないと考える余地は残しておきたい。ズームのデメリットは画質や歪曲、明るさよりも、ワーキングディスタンスの適切化がおろそかになる点だ。どんなに撮影経験が豊富な人でも、一歩前あるいは後ろに足を動かすまえにズーミングして構図を決定しがちだ。広角の場合は特に画角からくるパース感とワーキングディスタンスの関係が仕上がりを大きく左右する。

望遠ズームでは80-400mmと150-600mmは何かと意味合いが違う。80mmから400mmはめまぐるしく画角と視界感が変化する。150-600mmで変化がめまぐるしいのは両端で、400mmから600mmは慣れてしまえば感覚的な差は小さい(もちろん大いに違うのだけど)。人により撮影目的が違い感覚も違うので一般化しにくいが、だいたいこんな具合である。超望遠単焦点は高価なのでと真っ先に思うなら150-600mm、200mmを中心にして(つまり200mmを基準にした望遠拡張型の「Standard line up」的な)発想が思い浮かぶなら80-400mmを選ぶべきだろう。これもまた強制しようというものでなく、参考程度に読んでもらえればうれしい。

 

Fumihiro Kato.  © 2017 –

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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なる人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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