ヌケと解像感はつくれる

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ヌケと解像感はつくれると書けば、インチキをしている雰囲気が濃厚だが、つくれる以上は生かさない手はないのではないか。ヌケと解像感がつくれるなら、手法を正反対に活用して逆の効果も得られる。写真には「やってはならない」はないので、求めるものを追求するのは極々普通のことだ。余談ではあるけど、機材の展示会などで公開されるポスターパネルも、「丁寧な現像」を行い画像のヌケや解像感を増している。増しているもまた、インチキではない。確証があってのものでなく単なる見た目への感想だが、ここで説明する方法も使われているだろう。

この写真は製作途中のもので、もっとも気になる点をまず修正というか補正している。撮影は曇天も曇天、相当ガスっている状況。したがって遠方はほとんど見えず、物体のシャドーだけが飛ぶでもなくつぶれるでもなく曖昧に把握できるだけだった。もちろん中景も同様で、肉眼で解像されるのは近景のみ。このまま雰囲気を生かせればよいし、これが目的ならそのまま生かす方向で現像した。しかし、そこまで大胆なガスでなく、特にモノクロでは中途半端だった。私は人工物の違和感に心が惹かれていたので、どうしても人工的なものを人工的に表したかった。

とりあえず縮小画像でなく、クリックで大きめの画像を表示して見てもらいたい。

ガスった状態をクリアにするには、クラリティーまたは明瞭度のコントロールスライダーを上げればよいのだが、これだけでは遠方の陸地にあるパイプラインとラインを支える橋は背景から分離しない。クラリティーの操作とは、コントラストを上げるのでなく、ソフトウエアにプリセットされている独特な曲線で応答特性(ガンマ値)を可変させることを意味する。応答特性を変えるのだから、明暗の別ごと表情が変わる。この写真を例にするなら、パイプラインとラインを支える橋はかなり暗く、背景や手前にかかるガスはやや明るいので、これら明暗を分離すれば解像感が向上するはずなのだ。しかし明暗比が中途半端なうえに、ガスの影響からどんなに撮影時にがんばっても五里霧中の状態しかデータとして記録できない。これでは困った、である。

このような場合、強制的に輪郭を強調する他ない。シャープネスを上げる、だ。Capture One には「構成」なるスライダーがクラリティーと同居している。これは賢いアンシャープマスク的なもので、輪郭部に明暗比の高い白線の隈取りをするアンシャープマスクに対して、ある段階までは隈取りをつくらず、被写体そのものの明暗比を高めるものだ。ただこれは「ある段階まで」で、効果を高めるに従い隈取りをつくるのはアンシャープマスク処理と同じである。クラリティー同様にマイナス方向にも効果をかけられる。このような特徴を生かすのが最善であるから、前掲の写真では遠方の陸地からパイプラインにかけて「構成」を強めに施した。

と同時に加減を見計らいながら、アンシャープマスクもかけている。クラリティーを使用しなかったのは、線が太るからだ。クラリティーで(中間的な明るさを廃して)明暗比を強調した場合、ガスによる光の乱反射で実際の物体より太く見えている部分がすべて物体そのもののように「暗」として表現される=太くなる。また、鉄塔と風力発電機全体にもマスクを切り「構成」を同様に施している。風力発電機の「輪郭」は、全体像と背景、プロペラ内の一部、脚部の一部で、これを他と分離させても望んでいる状態にはならない。構造物そのものを固まりとして空と分離させ、人工物のまがまがしさを表したかった。それでもクラリティーではなく「構成」なのだ。

「構成」は輪郭部の強調効果を生かすためのツールだが、物体が接し会う部分(輪郭に相当する部分)だけでなく立体の面にわずかな明暗比があれば副作用としてここにも若干ながら明暗比の強調効果が及ぶ。若干も若干、ほとんどないに等しい効果だ。この副作用をプロペラ内の明暗に及ばすため最強の強さで効果を与えた。そこにクラリティーを小さじ半分ほど加える。ただこれでは輪郭部に明るい境界線がアンシャープマスク同様に描かれてしまうので、Photoshopに持ち込み1ピクセル単位でつぶして背景と同化させた。写真を拡大させたとき、遠景とプロペラの一部に白線または輝点が残っている。鉄塔の周囲にクラリティーの副作用として明るい領域がぼんやりかかっているが、違和感のある表現としてはアリかもしれないし、消すべきと判断したらまた別の方法を考えるつもりだ。

まあこれは私の異常な趣味に合わせてヌケと解像感をつくり出したものだが、前述のように展示物の大型ポスターなども似たようなものである。無から有を描写できないが、かろうじて存在する像から鮮明化を図るのは無理難題ではない。

Fumihiro Kato.  © 2017 –

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連絡 CONTACT

・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なり人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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