Wind power. Sand power. 時間を失った世界

海景 Wind power. Sand power. Kashimanada

鹿島灘 風力発電 砂丘 A wind power plant.

 

旅に出る。内なる律動にしたがい遠いところへ。と、書いたとおり東へ車を走らせた。年度末の月末、しかも金曜とあって初手から渋滞に阻まれて、目算していた時刻を二時間もすぎて海に到着した。

そろそろ海の撮影の旬が終わる。初夏から夏の終わりまで海に人が溢れる。この期間に海を撮影するのは人を撮影するのと他ならないものになり、これは人を画面からはずして構図を切っても同じなのだ。人のための舞台としての海の写真を撮影したい訳ではない。

では人はまったく関係ないのか。これもまた違う。海を取材しながら、人の痕跡を探す。未知なる場所で遺跡を探すのに似た撮影をしている。

ずうっと昔に観た映画「猿の惑星」のラストシーンが忘れられない。小さな砂浜に、崩壊し埋もれた自由の女神像が上半身を露わにしていた。永い宇宙旅行の末に辿りついたのは猿の惑星ではなく地球だった。猿の惑星は未来の地球である、という明示である。マンハッタンに今日存在する自由の女神はモニュメントだが、猿の惑星で描かれた自由の女神は遺跡である。

何十年も写真について考え続けてきたけれど、写真は時間を失った二次元の世界観を現すものと結論するのが正しいように思う。時間を失うこと、それは「死」のようなものだ。「死」によってはじめて経験できる世界観であり、「死」は無感覚だろうから感じることも語ることも無理なものだ。私の写真撮影は人の営みがこしらえた遺跡を探すようなもので、どうしても「死」を意識ぜるを得ない写りになると同時に、私自身も「死」の雰囲気にとらわれながらシャッターを切っている。こんなことを言うと嫌われるが、ポートレイトも同じ心境で撮影する。

私はかなり意図的に「死」と写真の関係を結びつけているが、誰が撮影しても同様だろう。時間を失った二次元の世界を記録するのだから。

こうした世界観を動画で表現すると、時間こそ命の動画ではだいたいにおいて丹波哲郎の「大霊界」的なものにならざるを得ない。あるいは寺にある地獄絵図。絵画でも地獄絵図かミケランジェロの「最後の審判」になり、あの時代の人々にはリアリティがあったかもしれないが、すくなくとも私には現世のしかも生きている人間の様子にしか見えない。「死」は写真だけが唯一可能な表現なのではないか。

「海景」と題したシリーズを説明するとき「涅槃」だと私は言う。「海景」に限らず、花を撮影しても「涅槃」である。涅槃=ニルバーナ= निर्वाणであり、魂の解放。究極の悟りを現すけれど、魂が解放され肉体は死ぬのが現実である。解放された魂は、きっと魂だけでは生存できないだろうし、解放されたと同時に死ぬはずである。涅槃が写し止められたとき、私はすこしはよい写真が撮れたと喜ぶのである。

Fumihiro Kato.  © 2017 –

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Profile

F.Hiro.K
加藤(文)文宏 / Fumihiro Bun Kato a.k.a Hiro.K
写真家・作家 / Photographer Author
・北海道北見市生まれ。
・大学卒業時までに詩集「無題あるいはサラバ」、同「Cadenza」発表(共に絶版、在庫なし。「Cafebza」別装丁私家版のみあり)。
・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。
・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他)
・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。
・不二家CI、サントリークォータリー企画・取材、Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告、武田薬品工業広告、他。アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材、MIT Museum 収蔵品撮影 他。
月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。
・長編小説「厨師流浪」で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」他、小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。
・獅子文六研究。
・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。
・各メディアにおけるスチル撮影。
・オリジナルプリントの製作、販売。
・JSAHP正会員
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