低価格帯のレンズだって捨てたものではない

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頭でっかちとは、ある種の洗脳状態だと思う。洗脳であるから、自分では真っ当な考えで生きていると信じて疑わない。とかくレンズに関して頭でっかちになりやすいもので、カタログを眺めるとき選択肢の中から使い勝手のよいものを見逃してしまう。最近はいたるところで解像度であるとか収差とか数値データが公表されて、使い込んでいないのに「あれはダメ」「これはすごい」と世間の撮影者の一部の間で喧々囂々となる。そう、使ってもいないのに。

わたしにとっての大切なレンズの1本が、AF-S NIKKOR 18-35mm f/3.5-4.5G ED である。実売価格は7万円台の後半くらいからだろうか。このあとに、ツァイスのDistagon T* 2,8/15 (この表記上の「,」だけど、ツァイスの正式表記なのでこれに従う)が焦点距離域をつないでいる。なのだけど、実際のところ広い画角はDistagon T* 2,8/15 と他の単焦点または明るいレンズがあれば不自由はしない。こんな風に書くと、18-35mm f/3.5-4.5はいらない子にされていると思われるかもしれない。いやいや、そんなことはないのだ。

まず、AF-S NIKKOR 18-35mm f/3.5-4.5G EDは軽くて小さい、ニコンのレンズとして色再現が統一できる。さらに、私が好きな超広角域までカバーしている。この大メリットを前にして、暗さ、F値変動、諸収差といったデメリットは、ほとんど問題にならない。Distagon T* 2,8/15 は大好きなレンズなんだけど、とにかくデカくて重い。そして、ニコンのレンズと色調が違う。超広角ズームとしてニコンにはAF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G EDがあるけど、やはり重厚長大。しかも、お高い。ツァイスを使用しながら、お高いなんて言うなとツッコミが入るかもしれないけど、私のレンズ観からすると「お高い」のだ。

値段をつけて売る写真にも、私はAF-S NIKKOR 18-35mm f/3.5-4.5G EDを使う。そもそも写真を撮影しなければ売れないわけで、撮影にメリットがあると思えばどんどん使う。だって写真の価値は、使用したレンズの数値データで決まるものではないのだし。それよりも、この手のズームは撮影する場所にたどり着くことに貢献し、さらに適応範囲が広いことが写真そのものの価値に反映される。だってひいこら汗まみれで息切れして撮影地点に移動しても何もよいことなんてない。この観点から、私はAF-S NIKKOR 18-35mm f/3.5-4.5G EDとDistagon T* 2,8/15 どちらを用意するか真剣に悩む。ほら、どこのテスト機関もカメラライターも両者を比較しないでしょう。たしかに広角端18mmと15mmは比較すべきものでないかもしれない。でも、他人はいざしらず私は AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED は念頭になく、前述の両者のうちどちらを選ぶか悩むのだ。

たとえばどのメーカーにも、70-300mmのズームがある。そして、お買い得価格が設定されているものが多い。そんなこんなで70-300mmは年に一回の運動会に持って行き、ときどき庭先の鳥を撮影するレンズで、ビギナーがまず買うものくらいの認識が世間には定着してしまっている。私はこのズーム域を必要としていないので買わないけど、別の人にとっては70-200mm f/2.8より使い勝手のよいものかもしれない。レンズの良し悪しは自分にとってメリットが大きいか否かなのに、洗脳状態の頭でっかちになると数値や評判、価格だけが拠り所になってしまうのである。

Fumihiro Kato.  © 2017 –

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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なる人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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