自動車は贅沢品で必要がないのに買っているのか

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愛する取得13年越えの車を悩みつつ手放し、新しい車を買わざるを得ない事情を「機材車、ロケ車の話」として書いた。まあでも、ひどいのは自動車を巡る税金だ。馬車、荷車への課税が時代の移り変わりにともない昭和30年に自動車税となり、この自動車税の根幹には「金持ちのあんたが贅沢品の自動車を買ったから」課税という発想がある。取れるところから取れであるし、ごくごく普通の生活に必要なものではない贅沢品だと言われたら「申し訳有りません」と払わざるを得ない時代の産物であるが、現在だって「贅沢だろ」と課税されているようなものである。自動車取得税は、小型/普通車が取得価格の3%、軽自動車は2%。取得価格とはオプションを含めた税抜き車両価格に0.9を掛けて、1000円未満を切り捨てた金額。では自動車税が財産税であるなら、減価償却済みというか下取り価格も中古としての売却でも値段がつかない車に自動車税が課税されるのは変だ。そして例の、取得13年越えの車に対する一年ごと上積みされる増税である。

車にまつわる税金は自動車税だけではない。自動車取得税/自動車重量税/ガソリン税(揮発油税+地方揮発油税)は1970年代に始まり、道路建設に充てるための「道路特定財源」として徴収が開始された。道路建設で恩恵を受けるのは車の所有者であり「受益者負担」である。ガタガタ道を舗装して、しかも遠回りしなくてもよいように道路を整備するから、これらは車の所有者が金を払え、だ。理屈に妥当面はあるが、はたして受益者は車の所有者だけか?  である。まあよいとして(よくないけどね)受益者負担を担うとしても、「道路特定財源」制度は2009年に廃止されて一般財源になったのですよ。さあ、どうだである。贅沢品の車を所有しているのだし、贅沢品の車のために道路を整備するからと、二重三重の税金を納得させていた根拠が消えたのに、まだ徴収される訳だ。

で、だ。最近、「そもそも車なんていらないものだ」と切り出し「贅沢で買っているのだしね」と言う人々がいるのを肌感覚で知るに至り、よく調教されているなと感じる。首都圏の駅近くに在住している生活者なら「足」は公共交通機関で事足りるだろうし、荷物が嵩むならタクシーを使えば毎日のように使用しても車を買うより得かもしれない。こういった恵まれた環境、状況にあるなら、車を所有するなんて宝石や高級時計を買い漁るのと変わりないコトに思えても不思議ではない。ただあまりに視野狭窄、認知の歪みが極まっていると言わざるを得ない。なぜ、私がそう言うのかは前掲のリンク先を読んでいただくとしよう(ちゃんとカーシェアリングについても触れている)。そして私には関係ないことだが、世の中は首都圏のように足の弁がよい地域ばかりではないし、所によっては近隣の商店などが根こそぎなくなり生活圏がいびつに拡大している例が山とあるではないか。では、私を含めてこれら車を所有する人たちは「贅沢」なのか、である。そりゃメーカーオプションやらディーラーオプションやら着けるし、旧共産圏、社会主義圏に存在した「庶民カー」的なものでよしとはしない。なのだが、買い物をするなら個々が適切なものを求めるのが道理だろう。自転車が好きな人に、「車なんて贅沢で買っているのだしね」と言いい「自転車なんてママちゃりで十分でしょ。なんだったらリヤカーつければ万全」と言えるだろうか。私は自転車趣味はないが言えない。だから高齢でも車が手放しにくい環境の人にも、判で押したようには「買うな、乗るな」とは言えないなあ。

さて、だ。いずれ消費税が10%に増税である。国は消費税10%増税時に自動車取得税は廃止すると言った。よい時代になるかと思ったら、代わり(名前を変えて)環境性能割税率を導入なのだそうだ。「環境性能割税率」とは何か、である。「環境性能割税率」は、平成27年度燃費基準達成車と+5%達成車が取得価格の3%、同基準+10%達成車が2%。平成32年度燃費基準達成車が1%、同基準10%以上達成車が0%。軽乗用車の場合は、平成27年度燃費基準達成車と+5%達成車と+10%達成車が取得価格の2%。平成32年度燃費基準達成車が1%、同基準10%以上達成車が0%だ。ざっくり言おう、現在のエコカー減税にほぼ近い。で、年度別の達成率次第では減税になるが、(事実上の)増税になるものもある。エコカー減税より税率が低いため一見すると大枠減税の方向に見えるかもしれないが、車によってはあきらかな増税になる。いやいや消費税が10%になるのだから、消費税増税時に取得費用はどの車種でも増えるのだ。ようするに、車は高くなる。財務省は、公言しないだろうが「贅沢だろ」と車の所有者から税金を絞り取るのである。まあ財務省の高級官僚はお金持ちだろうし、贅沢のつもりで車を所有しているかもしれないけどね。

こうして確実に車は高くなる。したがって、年度末に向けて駆け込み需要が増えるだろう。ただ、私のようにかなり追い詰められた人、あるいは買い換えるだけの準備が整っている人は年度内に買い替えられるが、財務省が思うほど車の所有者は金持ちではないから翌年度にこぼれる人は多いだろう。でもって、ますます高くなる車を買うのだから「贅沢」と言う人が増えるかもしれない。なんてこった、なのだ。車を贅沢として購入している人が皆無とは思わない。実際のところ、道楽で車を買う人はいる。では、必要がないのに買っているのか。車の所有者のほとんどすべてが、必要だから買っていると言うだろう。ここに俺様はクール、俺様は合理的とばかり「そもそも車などいらないね」と言う人がいるのは前述した。ある人の「必要」は他の人からしたら「不必要」に見える場合もあるが、よほどのことでなければ他人が口を挟んで干渉するようなものではないはずなんだけどね。私だって「自動車」という交通手段以外のナニカが燦然と登場したら、それを使いたい。けど、そんなものはないのである。ほんと、そんなものがあるなら多くの人がそちらを選択するだろう。どうせ、また「贅沢品」として課税されるのがオチだろうけれど。

世の中が妙なゆがみを呈して貧しくなっているけど、悲しいよね。「はいはい贅沢、様々な苦労を厭い車を所有して運転するのは贅沢、内心の自由のため車を所有して運転するのも贅沢」と声に出して言い、「これらの必要を満たす贅沢の何が悪い」と開き直ったほうがよいのかもしれない。

 

 

Fumihiro Kato.  © 2016 –

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・スタジオ助手、写真家として活動の後、広告代理店に入社。 ・2000年代初頭の休止期間を除き写真家として活動。(本名名義のほかHiro.K名義他) ・広告代理店、広告制作会社勤務を経てフリー。 ・不二家CI、サントリークォータリー企画、取材 ・Life and Beuty SUNTORY MUSEUM OF ART 【サントリー美術館の軌跡と未来】、日野自動車東京モーターショー企業広告 武田薬品工業広告 ・アウトレットモール広告、各種イベント、TV放送宣材 ・MIT Museum 収蔵品撮影 他。 ・歌劇 Takarazuka revue ・月刊IJ創刊、編集企画、取材、雑誌連載、コラム、他。 ・長編小説「厨師流浪」(日本経済新聞社)で作家デビュー。「花開富貴」「電光の男」(文藝春秋)その他。 ・小説のほか、エッセイ等を執筆・発表。 ・獅子文六研究。 ・インタビュー & ポートレイト誌「月刊 IJ」を企画し英知出版より創刊。同誌の企画、編集、取材、執筆、エッセイに携わる。 ・「静謐なる人生展」 ・写真集「HUMIDITY」他
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